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強制的魔王  作者: ほのぼのる500
配下の誕生
50/58

50話

傍に置く?

彼らを?

俺たちの傍にいても、彼らにメリットはないと思う。

ならどうして傍に居てくれる?

配下として産まれたから?

もしかして、何か縛りがあるんだろうか?


「配下として産まれたせいで、俺たちから逃げられないのか?」


えっ?

あっ、漫画でそんな感じの話を読んだ記憶があるな。

たしか、産まれた時から契約みたいなやつで縛られてるって……マジで?


「今、光輝様は我々を自由にすると言いました。ですので、我々とあなた方を縛っていた契約は切れましたから、そうではありません」


やっぱり、そんな契約があったんだ。

怖いな~この世界。

あれ?

今光輝様って言ったっけ。

私からも「自由になっていい」と言わないと駄目なのかな?


「私からも自由になっていいよ」


これで私たちからは完全に自由かな?


「えっ……分かりました。ですが、我々は光輝様と遥様と共にあると新たに契約を結びたいと思います」


なんでだ?

意味が分からない。


「俺たちといてもメリットはないと思うけど……」


光輝の言う通り、私たちといてもメリットが無いよね。

どう考えたって、全く無いよね!


「光輝様と遥様は我々にとって、命の恩人です。ですから先ほど誓ったように我々の全てを掛けてお守りいたします」


ラセツの言葉に首を傾げる。

命の恩人?

なんの事だ?

そんな事はしていない。


「間違いじゃないか? 命の恩人って……遥?」


「いや、私に振られても。……どいういう事?」


そんな事をした記憶は一切ない。

誤解があるのかな?


「私たちは瀕死の状態まで追い込まれていました。あと数秒遅ければ、消滅していたでしょう。それを救いだしてくださったのが、光輝様と遥様です。しかもかなり純度の高い魔力を惜しげもなく私たちに分け与えてくれた。ご自身の力の強化に使わずにです」


ニュクスの言葉に首を捻る。

純度の高い魔力?

惜しげもなく?

もしかして、勝手に奪っていったあの魔力の事か?

あれは分け与えるというか、取っていったという感じだったが……

あれ?

強化に使わず?

つまり、あの力を使っていたらもっと強くなれたって事か?


「悪い。ニュクス達の命を救おうとしてやった行動じゃない。まぁ、確かに助けられるならと思って魔力は渡したが……」


光輝の言葉に頷く。

そう、あれはたまたまそうなっただけだ。

彼らの命が危ないから助けようとしたわけでは無い。


「光輝様と遥様の行動が我々の命を救った事に違いはありません。それに、我々は元々あなた方に命を頂いた存在です」


「頂いた?」


「光輝様と遥様が我々を誕生させたのです」


命とか誕生とか、ラセツの言葉が重い!

それに、自分たちの強化が出来るってわかっていたら、卵を守らなかったかもしれない。


「俺たちは……」


どういえばいいんだ?


「光輝様、遥様の気持ちがどうあれ、我々が命を授けられ守られたという事実は変わりません」


……そうなんだけど、なんだかすっきりとしない。


ラセツ、イザナ、オシリス、シヴァ、ニュクスを順番に見る。

迷いがない目をしているように感じる。

逆に私や光輝は迷ってばかりだ。

彼らが決めた事を、覆せるとは思わない。

それに、いてくれると正直なところ心強い。

いつか裏切られるかもしれないけど……。


「光輝、一緒にいてもらおう」


遥の言葉に視線を向ける。

彼女から、不安な気持ちも伝わってくる。

確かにラセツ達がいてくれると安心できる。


「ラセツとイザナとニュクスの気持ちは伝わったけど、オシリスとシヴァは良いのか?」


俺の言葉にオシリスとシヴァが頷く。

そして俺をじっと見つめてくる。


「分かった。これからよろしく頼む」


「よろしくお願いします」


ラセツ達に向かって頭を下げる。


「光輝様、遥様、私たちに頭を下げる必要はありません」


ニュクスの言葉に戸惑うが、何とか頷く。

光輝を見ると、微妙な表情をしていた。

きっと落ち着かないんだろうな。

元の人生で、こんな傅かれる事なんて無かったし。

どうにもむず痒い。


「では、光輝様、遥様。これからの事を話しあいましょう」


「分かった。遥――」


ドゴンッ。


「何?」


大きな音と振動に、羽がびくりと震えてしまう。

光輝は不安げな表情で、外へ続く出入り口を見る。


「敵が来たようです」


イザナの冷静な言葉に、少しだけ気持ちが落ち着く。

敵。

この世界を片付けに来た者だろうか?

もしそうなら、遥に体を与えられるかもしれない。

でも、もしも違ったら?

もしドラゴンを送ってきた奴が、新しく強い魔物を送って来ていたら?

どうしよう。


「排除します」


ラセツの言葉に、はっとする。

人型がいたら、遥のために傷つけずに手に入れて欲しい。

でも、そんな事を言ってもいいのか?


「こちらにいてください。シヴァ、守ることが最優先だ」


イザナの言葉にシヴァがくるりと空中を回る。

それを見ていたら、目の前にいたラセツとイザナの姿が、すっと目の前から消えた。

あっ、しまった。


「あれ? ラセツは? イザナは?」


部屋を見回すが、何処にもいない。

ドドーン。

音と振動が再度鳴る。

正直、怖い。

今すぐ安全な場所に行きたい。

行ける場所なんてないけれど……。

光輝を見ると、なぜか焦っている。

どうしたんだろう?


「光輝?」


「えっ、あ~」


ドドーン。

ギャガギャガ。

音がより一層、激しくなる。


「すごい音、ラセツとイザナは大丈夫かな?」


「遥様、2人なら大丈夫です」


ニュクスの言葉にオシリスが同意するように頷く。


「遥」


「何?」


「人型だったら、確保してくれというのを忘れてたんだ」


人型?


「あっ!」


人型が手に入った可能性があったのに。

今からラセツ達に行って、確保してもらう?

ギャギャギャ~。

……無理、無理、無理。


「今度の機会でいいよ。絶対に今は外に出ないほうがいいと思うし」


というか、ここから出るとか今は考えたくない。

だって、すごい音がするし、振動もすごいし。

それにひしひしと纏わりつくような嫌な気配? 魔力? みたいなものを感じるし。

これは絶対に外には出たら駄目な奴だ。

ギャ―ガガガ。


「それに、求めている方の敵ではないと思う」


「……そうだな」


光輝の言葉に何度も首を縦に振る。

しばらく鳴り響いていた音が、不意に止んだ。


「終わったのかな?」


ラセツとイザナは大丈夫だったかな?

もし怪我をしていたらどうしよう?


「光輝様、遥様、2人は無事のようです」


ニュクスの言葉に体から力が抜ける。

遥を見ると、部屋の中を飛び回っていた。


「外に出ても問題ないか?」


俺の言葉に遥がこちらを向く。


「はい、大丈夫です。安全を確保できましたので」


「ありがとう。遥、行こう」


「うん」


扉を開けて部屋を出て廊下を進み外へ出る。


「あれ?」


「どうした?」


「長かった通路が消えてる」


遥の言葉に今出てきた扉を見る。

確かに扉の前には長い通路があったはずだが、それが無くなっている。

何か理由があるのか?


「すごっ、何? 天使?」


遥の言葉に慌てて視線の先を見る。


「マジで天使かよ」


背中に白い大きな羽がある人が地面に数人転がされていた。

まぁ、魔王がいるんだから天使だっているとは判断したけど、実際に目で見ると衝撃だな。

……しかも死んでるし。


「敵はゲームの参加者だったようですね。天使としてはそこそこの力を持っていました」


「……そうか」


俺たちみたいに巻き込まれた奴だったのか。

何だか、気分が悪くなるな。


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