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強制的魔王  作者: ほのぼのる500
魔王Lv?
37/58

37話

「これ、どうするんだ?」


卵のままでは配下とは言えないよな。

産まれるまで待つのか?

それとも俺たちが何かする必要があったりするのか?


「どうするとは?」


「誕生はしたけど、産まれてないからさ」


「あぁ、そうか。えっと、どうするんだろう? 取り扱い説明書が欲しいね。なんか無いかな?」


アルフェが部屋の中を飛び回る。

すぐに戻ってきて首を横に振った。


「卵以外になにもない」


「まぁ、そうだろうな」


「はははっ。卵に触ったら、何かわかるかな?」


アルフェの言葉に近くにある卵に尻尾の先を触れさせる。

すると、卵が空中に浮かび上がる。


「浮かんだ」


「……それだけ?」


空中に浮かんだ卵はそのままの状態をキープして動かなくなる。

しばらく待ってみるが、それ以上の変化は無い。

ただ、空中に浮かんでいる。


「意味があるのか、ないのかも分からないね。まぁ、一応変化だし、他の卵も浮かべておこうか」


アルフェが飛び回りながら卵に触れていくので、俺もそれを手伝う。

後で後悔はしたくないからな。

それにしても、体が大きくなったので移動が少し楽だな。

バゴッ。


「ん?」


「今の音、何?」


「悪い。尻尾が壁に当たった音だ」


「なんだ。びっくりさせないでよ~」


そうか、体が大きくなったという事は長くもなったという事か。

後ろを見て意識して尻尾を伸ばす。

かなり長い。

これは動く時に気を付けないと駄目だな。

いつか何かを壊しそうだ。

全ての卵が空中に浮くと、自然と綺麗に並びだし、今では綺麗な間隔で浮かんでいる。


「なんだか不気味な工場みたい」


「確かにな」


部屋中に綺麗に並んだ卵。

これだけ見ると、どことなく不気味だな。


「レベルアップおめでとう! 配下を強化を解放。強化する?」


「「えっ?」」


レベルアップ?

さっきもしたよね?

まぁ、強くなるのは嬉しいからいいけど……それより強化!


「なるほど、強化をしていくと生まれてくるという事か?」


ラルグの言葉になるほどと納得する。

つまりは、ガンガン強化すればいいという事だ。


「なら、とっとと強化しないとね」


「そうだな」


アルフェが卵を見ながら、弾んだ声を出す。

どうも仲間が出来る事が嬉しいようだ。

まぁ、2人だと寂しいもんな。

俺は別に2人でもいいと思うけど……いや、仲間は必要か。


「強化していい?」


「あぁ、いいぞ」


そう言えば、配下の強化で消費されるモノは何なんだろう。

魔石? それともヴァン?

ヴァンはガチャを回すためのモノだよな?

という事は魔石か?


「強化する」


アルフェの声が部屋に響く。

次の瞬間、並んだ卵が淡く光りだす。

その様子をじっと見ていると、なんだか体がどんと重くなった。


「なんだ?」


異様な体の重さに加えて、視界もぼやけてきた。

これってもしかしてやばいのではと思った瞬間、すっと意識が飛んだ。

どこかで「ぎゃっ」という声と何かが落ちる音がしたような気がした。


…………


ぱっと目を開けると、床が見えた。

なんで俺、こんな場所で寝てるんだ?

ん? 

何かあったのか?

…………あっ、そうだ!

配下を強化するを選んで……倒れたのか?

重たい体を持ち上げる。

うわ~、すごい重い。

というか、動かしづらい。


「はぁ~、倒れた原因は配下の強化だよな。強化するには俺たちの何かが必要だったというわけか。だったら最初にそう言ってくれよ。マジで!」


アルフェはどこだろう?

意思を失う前に何か叫び声が聞こえたような気がするんだが。

重くふらつく体を持ち上げて、周りを見る。


「なんだか見えにくいな」


部屋全体がなんだか暗い。

配下の卵があった部屋は、かなり明るかったと思うけど、何かあったのか?

それとも俺の目に何か問題があるのか?


「ん゛~」


声?


「アルフェ? アルフェ、無事か?」


くっ、声がかすれてやがる。

聞こえないか?


「ん? あれ?」


「アルフェ?」


この声、ラルグ?

それにしては聞きづらいけど……。

ところで私、なんでこんなところに寝っ転がってるの?

もしかして、寝てたのかな?

この姿になってから寝られないんだけど……。

それにしては動けない。

羽に力を入れてみるが、駄目だ。


「アルフェ? 俺の声、聞こえるか?」


あれ?

ラルグの声が何だか泣きそう?


「ラルグ、どうしたの? 大丈夫? というか、何があったんだっけ?」


良かった、聞こえてた。

安心したら、なんだか疲れがどっと押し寄せてきたな。

少し体を横にして体力が戻るのを待つか。

目を閉じてゆっくり呼吸する。


「ラルグ?」


「あぁ、悪い。配下の強化を選んだら、2人とも倒れたんだ」


倒れた?

……寝られるようになったわけでは無く、意識が飛んでいたのか。

何だかすごく残念。


「アルフェ?」


「ごめん、大丈夫。ラルグは? 大丈夫?」


「俺も体が重いぐらいだな、視界が悪いのと声が出しづらい」


えっ?

私よりひどくない?

私は、あっ……視界が悪いや。

もともと見えていなかったから、見えない事に違和感を覚えなかったわ。

ちょっと前に見える様になっていたんだった。

えっと、後は声?

声は、問題ないかな。


「体の重さと視界が悪いけど、声は大丈夫みたい」


「そうか。よかった」


そう言えば、配下の卵はどうなったんだろう。

足に力を入れて立ち上がる……羽が重い!

体に合わない羽になったせいか、余計に身動きが出来ないよ!

はぁ、もう少し体力が戻ってからにしよう。


「ラルグ、倒れた原因は魔力切れかな?」


「まぁ、そうだろうな」


やっぱりそうか。

まぁ、それしか考えらないよね。

魔力が0になったら死ぬという設定のゲームとかあったよね。

この世界はどうなんだろう?

考えたら、怖いな。

生きててよかった。

あっ、視界がクリアーになってきた。

魔力が減ると視界も悪くなるって事を覚えておこう。

さて、卵は?


「うわっ、卵がすごい事になってる!」


アルフェの声に目を開ける。

あれ?

部屋が明るくなってる?

周りを見ると、卵が見えた。


「えっ!」


「強化が成功したって事かな? あれ? でも小さくなっている卵もある」


アルフェの声の合間に、ずずっと変な音が耳に届く。

視線を音の方へ向けると、羽を引きずって移動するアルフェの姿が見えた。

慌てて体を起こす。

何をやってるんだ!


「アルフェ、駄目だ! そんな事をしたら羽を痛める」


「えっ?」


重たい体を何とか動かしてアルフェの前に行く。

驚いたのか目を見開くアルフェ。

まったく何を考えて、羽を疎かに扱っているんだ。


「羽を痛めたら飛べなくなるだろう!」


「……ごめん。ここの床綺麗だったから大丈夫かなって思って」


「駄目だ。羽は繊細なんだから」


ラルグが尻尾を動かし羽を持ち上げて様子を見ている。

もしかして傷でもつけちゃったかな?


「よかった。大丈夫そうだ」


「ありがとう」


ちょっと、今のラルグ怖かったな。


「卵を一緒に確認しよう?」


「分かった」


良かった、落ち着いてくれた。

本気でちょっと怖かった。

小さく息を吐きだして、もう一度卵を見る。


「大きいのは分かるが、なんで小さくなってるんだ? 失敗か?」


ラルグが前にある卵と横にある卵を見比べている。

確かに、不思議。

強化をしたためか、卵が大きく変化を遂げていた。

1つは大きさ。

大きくなったり、小さくなったりしている。

次に色。

薄っすらと白い卵に色がついている。

まぁ、魔王の配下だからなのか灰色や黒が多いようだけど、中には赤やオレンジもある。

ちょっとぐらい触っても大丈夫かな?

そっと羽を卵に触れさせる。


「暖かい」


アルフェを見ると、大きくなった卵に抱き着いている。


「あっ、ラルグ! すごい、音が聞こえるよ」


アルフェの隣に行って、卵に耳をくっつける。

トクン、トクン。

まだまだ小さいが、心音のようなモノが聞こえる。


「生きてるんだな」


「生きてるね」


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[気になる点] 誤>「あっ、アルフェ! すごい、音が聞こえるよ」 正>「あっ、ラルグ! すごい、音が聞こえるよ」
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