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強制的魔王  作者: ほのぼのる500
勇者 フィン
19/58

19話

3人の配下の1人、カルチェが扉を開く。

そこを当たり前のように通り外に出ると、一瞬視界が真っ白に染まる。

目が慣れてくると見えるのは、広がる青い空。

門から出てしばらく歩くと、見えてくるのは西大陸最大の市場。

石畳にレンガの建物。

大通りの左右には店が並び、人々の笑顔が溢れている。


「フィン様、おはようございます。今日は良い肉が手に入ったんですよ」


綿の服を着た恰幅の良い男性が、笑顔で自慢の肉を少し持ちあげる。


「おはよう。あとで串焼きでも貰おうかな」


赤茶色の少し伸びた髪。

背は190㎝ほどのガッシリした体型の男性が、肉を見て頷くと男性に答える。


「フィン様に食べてもらえるなら、丹精込めて焼かせていただきます!」


肉屋の店主の返事に満足そうに頷くと、フィンは道の先にある建物に向かう。

建物はこの国一番大きい冒険者ギルド。

そこに討伐してきた魔物を売るために来たのだ。


「フィン様、おはようございます」


「おはよう」


フィンが歩けば歩くだけ声がかかる。

返事を返しながら少し下を向き、冷笑する。


「ご主人様。討伐した魔物は全て売るのですか?」


「あぁ、全てだ」


俺の言葉に後ろから少し苛立ったような雰囲気を感じる。


「なんだ?」


「いえ、なんでもありません」


配下の1人カルチェから声が返る。

こいつはどうも気に入らない。

俺が()()()のに、態度が悪い。

こいつを消し、別のを作るか?

だが、そうなるとキュマが必要になる。

俺が強くなるためのキュマをこいつらに?

それはあり得ない。

あれは俺が強くなるためだけにある。

後でしっかり躾けなおすか。

ちらりと後ろにいるカルチェを見る。

俺の視線を受けて微かに体が強張るのが分かった。

大人しくいい子にしてれば良いものを。


「行くぞ」


「「「はっ」」」


レンガ造りの2階建ての建物の前に来る。

すぐさま後ろにいた配下のヒリルアが前に来て扉を開け、俺を通す。


「カルチェ、魔物を裏に持っていけ」


「はっ」


カルチェが裏に行くのをちらりと確認する。

今のところ問題は先ほどの事だけか。


「まだ、様子見だな」


「ご主人様? 何かありましたか?」


「いや、問題ない」


建物の中には、この町で冒険者をしている者たちの姿がある。

その者たちが俺を目にすると、羨望の眼差しを向ける。

地道に続けてきたかいがあったな。

この村での俺の地位は盤石だ。

西大陸はこれぐらいにして、東の大陸の方に力を入れるか。

面倒くさいが仕方ない。


「フィン様。おはようございます」


小綺麗な格好をした20代の女性がカウンター越しに声を掛けてくる。

それに笑って挨拶すると、かすかに頬が染まるのが分かる。


「依頼があった魔物を討伐したので売りにきた。魔物はカルチェが裏にもっていったので確認して欲しい」


「あの魔物をもう討伐していただけたのですか? さすがフィン様です。他の冒険者だと10日以上が必要ですのに」


「おいおい、フィン様と俺たちを一緒にするなよな。フィン様は特別な方だ。俺たち一般人とは違うのさ。なぁ?」


「そうだ。フィン様は特別なんだよ」


少し大きな声だったからだろう、建物内から賛同の声が上がる。


「ありがとう。皆が俺を認めてくれてうれしいよ」


言葉1つで盛り上がるのを見て、笑みが浮かぶ。

代金を受け取り、建物を後にする。

これでこの国でもやるべき事は終わる。

来た道を戻りながら、注意深く人々を観察する。

少しの異変を見落とせば、後で大きな被害を被る事になる。

後ろにいる配下に任せる事は出来るが、いまいち信用できない。

もっと、出来る奴を作ればよかった。

これだけは悔やまれる。


「店主、10本くれ」


約束は大切だ。

それが評価にかかわる。


「フィン様。本当にいつもありがたい。サービスしておきますね」


「悪いな。ありがとう」


配下のジルールが店主から商品を受け取るのを見て、屋敷に向かう。

市場周辺で一番大きな屋敷は存在感がある。

屋敷に近づくと、扉の前で待ち構えていたメイドが静かに扉を開けた。

建物の中は、窓から入る光で明るい。

その窓には透明なガラスが使われており、この屋敷がの持ち主が裕福である事が窺えた。

無言で歩き続け、この屋敷で一番広い部屋にたどり着く。

その部屋は薄暗く、中央にごつごつした透明の石を乗せた丸い机だけがあった。


「戻るぞ」


「「「はっ」」」


フィンが机の上に乗っている石に手を乗せる。

すぐに床に何か模様が現れ、部屋を光が襲う。

視界がぐしゃりと歪むので目を閉じる。

眩しかった光が収まると目を開ける。

視界に入ってきたのは、白い空間。

そして扉。


「「「おかえりなさいませ」」」


扉を開けると、メイドたちが出迎えた。

小さく頷くと、白い空間から続く通路を突き進む。

通路には、盾や剣、槍など武器になる物が飾られている。

どれも、俺が自分の力で手に入れてきた戦利品。

その中を歩き、絢爛豪華な扉の前に立つ。

すぐさま扉の左右にいる護衛騎士が扉を開ける。

中に入ると、目に入るのは数段高くなった王座。

無言でその王座に座ると、配下の3人とメイドの3人が跪いた。

それに満足げな笑みが浮かぶ。


「ご苦労。各自仕事に戻れ」


「「「「「「はっ」」」」」」


俺の言葉にすぐさま持ち場へ戻る配下とメイドたち。

俺がそうなるように作り、育てた。

少し気に入らない者もいるが、それはおいおい躾ければいい。

今は。


「ステータスオープン」


ウィン


勇者 :フィン・デ・マコリLv8 (トカゲ)

魔法 :水魔法(3.9)[ウォーター(5.4)、ウォーター・アロー(2.5)]

スキル:身体強化(4)、強打(3.3)、精神強化(4.1)、高速詠唱(2/10)、弓術(1.6)、回避(1.7)

称号 :魔王殺し(6)

キュマ:4672/5000

魔石 :650


「ワールドステータスオープン」


ウィン


世界 :アルトリカ(2.8)

星  :マーシャー(3.9)

国  :中黄ちゅうきの国(2.5)

大陸 :西大陸(2.1)、東大陸(0.2)


星のレベルが後0.1上がれば人を増やすことが出来るな。

世界レベルもあと少しか。

国はレベルが低すぎるな。

東大陸は手を付けていないからだろうな。

それにしても魔法のレベルがなかなか上がらない。

どうすれば上がる?

やはりまだまだ魔王を殺し足りないという事だろうか?

しかし、魔王が治める世界が見つからない。

仕方ない、これは見つかるまで待つしかないな。


「失礼します」


「どうした?」


「魔王がいる世界が見つかりましたが、どうも様子がおかしいと偵察隊から連絡がきています」


様子がおかしい?

今までと違うという事か?


「魔王の姿は見たのか?」


「5日潜伏して様子を見ているようですが、姿を見せないと連絡がきています」


5日も?

潜伏出来る場所は国だ。

国がある以上、Lv5以上のはず。

このレベルになっていれば、国にいた方が得が多い。

それなのに姿を見せない。


「あと5日潜伏して魔王が姿を見せるか確かめるよう言え」


「分かりました」


魔王が姿を見せないと、狩ることが出来ない。

奴らを殺さないとレベルが上がらないのに。

クソが。


「キュマが溜まりました。魔法の欠片を手に入れよう」


また、これか。

いや、使える魔法が多くなるのは良いが今はレベルを上げたかった。

とりあえず、魔法の欠片を選ぶか。


「おめでとう! 魔法の欠片を8個手に入れました。魔法の欠片は全部で69個です」


69個の欠片か。

あと31個。

100個になれば新しい魔法を手にできるな。


「魔石の数は250個です。魔石を使って何をする? 【魔物を出現させる55個】【世界のレベルを上げる5000個】」


代わり映えしないな。

これは魔物でいいな。

魔物を狩れば、世界レベルが上がるのは既に実証済み。

だったらわざわざ魔石を使って強化する必要はない。

俺が強くなれば自然と周りも強くなるのだから。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] >俺が作・っ・た・のに、態度が悪い。↓「作り返す」。言いたい事は分かりますが、そんな単語は無いので違和感が。 読者の方が誤字報告で入れた注釈がそのまま残っているようです。
[一言] 魔王がいれば勇者もいるのは当然として……(トカゲ)? まあ魔王もヘビとコウモリだしな。 強い。すでに魔王殺し6。 コイツは難易度ルナティックだわー:(;゛゜'ω゜'):ガタガタ
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