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強制的魔王  作者: ほのぼのる500
強化1
18/58

18話

「終わった~」


羽を広げて床に転がり目を閉じる。

気分は人間の時の大の字。

蝙蝠だけど。


「あ~、大満足」


ラルグの声に、ため息が出る。

まさかこんなに凝り性だとは思わなかった。

私は適当でいいと思ったのだが、太陽と月の位置にこだわりを見せたラルグ。

しかも星からの距離が重要だとか言い出して、本当に大変だった。

色々説明はしていたが、理解不能。

目を開けて視線を天井に向ける。


「地球から見た宇宙とそんなに変わらないね」


目に映ったのは、私の暗黒の国があるらしい星から見た宇宙の映像。

太陽の移動に四苦八苦していると、たまたま映像を切り替える事に成功。

色々試してみて、今ではそれぞれの星から空や宇宙を見られるようになった。

まぁ、この星から宇宙を見た映像のせいで、ラルグがもっとやる気になってしまったのだが。


「魔石の数は20個です。魔石を使って何をする? 【魔物を出現させる5個】【星に息吹を1000個】」


「「……」」


1000個?

いやいや、待て。

いったい何回魔物を出現させればいいんだ?

1回110個ぐらいで8回か?

合ってるのか?

……間違っている気がする。

とりあえず8回として、ずっとラビットのように弱い魔物なのか?

そんなわけないよな。

そんな優しいゲームじゃない。

どんな魔物が出現するのか、それによってはマジで死ぬかも。


1000個?

いきなり?

もっとなんかこう……はぁ。

このゲームに期待しても無駄だったね。

1000個という事は、8回でいいのかな?

9回? あれ? 10回?

まぁ、とりあえずやるしかないんだろうけど、死にたくないからね。

それにしても休憩ぐらいは欲しい。

……ぐだぐだ、考えても仕方ないか。


「よしっ、強くなるためと思ってやるか!」


「アルフェは強いな」


「ここで死んだら、すべてが無駄になるからね。意地でも生き残ってやるわよ」


「はははっ、そうだな」


確かにここで死ぬわけにはいかないか。

それに考え方を変えたら、アルフェの言う通り強くなるチャンスだ。

「弱ければ殺される」と言われている以上、強さを求めるしかないしな。


「押すぞ」


ラルグの尻尾が【魔物を出現させる5個】に触れるのを見つめる。

私は別に強くはない。

ただ、死にたくないだけ。


「いつでもどうぞ~」


軽く言うと苦笑が聞こえた。

失礼だな。

なるべく雰囲気が重くならない様に気を付けているのに。

まぁ、自分のためだけど。


「【魔物を出現させる5個】に決定! 魔石の残りは15個。魔物は次から選んでください【A】【B】【C】」


「またAでいいか?」


「いいよ」


「ラビット100匹に決定!」


またラビット?

もしかしてAはずっとラビット?

それだったら、ちょっと気持ちが楽だけど。


「ラビットだったね。良かった」


ラビットか。

今回は大丈夫そうだな。

ラビットが出現してる間に、攻撃魔法を取得したいな。


「アルフェ」


「どうしたの?」


「次のラビット、俺だけで戦っていいか?」


「えっ? どうして?」


「レベルアップのためと攻撃方法を増やしたい」


ラルグの攻撃方法は強打だけ。

確かにラルグの気持ちは分かる。

ん~でも、私も強くなりたい。

と言うか、ならないと駄目だと思う。

それに私だって超音波攻撃だけだし……。


「だったらこの次、ラビットだったら私だけで戦ってもいい?」


「あぁ、順番に戦って強くなろう」


アルフェがいると思うと頼ってしまう。

1人だと思えば、火事場の馬鹿力で何かが出来るかもしれない。


「なら決定! 頑張ってよね。怪我なんてしないように!」


「了解!」


何としてでも攻撃方法を増やさないとな。

アルフェから聞いた、奴らの言葉がずっと気になっている。

「あの御方を楽しませる駒」で「お遊び」そして「飽きた」。

つまりこのお遊びは、あの御方が飽きるほど長く続いているという事になる。

その間に俺たちのような駒とされた者たちがどれだけいるのか。

正直予想が出来ない。

そして、奴らは駒同士を戦わせているのではないかと考えている。


「本当に考えたくないがな」


だが、それも視野に入れておく必要がある。

なぜなら長く続いている以上、俺たちよりはるかに強い駒たちがいると予測できる。

今から魔王として力を付けて立ち向かえるとは思わないが、それでも逃げ場がない以上やるしかない。

弱ければ殺されるのだから。

そして考える通り、俺たちと同じような駒が戦いに来るなら勝たなければならない。

恐らく負けは許されない。

「負け=死」だろうから。

正直、奴らの思い通りに動いている事に苛立ちを感じる。

だが、生き残るためには今は仕方ない。

そう、今だけだ。


「ふ~、強くなる。生き残るために」


ラルグの言葉に気持ちが落ち込む。

ラルグもきっと気付いている。

いずれ、私たちが戦う事になるのは同じ被害者なんだと。

逃げ場もなく強制的に参加させられた被害者。

分かっている。

戦わなければならないことぐらい。

負ければきっと待ち受けているのは「死」。

死にたくない。

だから強くなろうとしている。

でも、実際に同じ被害者を前にして戦えるのか不安になる。

だって、彼らも被害者なのに。

奴らの思い通りになっているのが忌々しい。


「アルフェ」


ラルグの言葉に視線を向ける。

そこにあるのは赤い細長い色。

蛇でもいいから顔が見たいな。


「どうしたの?」


「生き延びて、奴らに仕返ししようぜ」


ラルグの言葉にふっと笑みがこぼれる。

恐らく蝙蝠だから表面上は何も変わっていないだろうけど。


「そうだね」


きっとこれは出来もしない約束だ。

奴らは俺たちを生み出すぐらい強い。

そして2度と会わないと言っていた以上、会えないだろう。

でも、いつかきっとぶっ飛ばしてやる。

夢はあった方がいいからな。


「私も手伝うよ」


きっとただの夢物語。

奴らがしようと思えば、きっと私たちは一瞬で消される。

でも、夢を見るのは自由だから。

強制的にゲームに参加させられているけど、夢は自由。


「絶対に仕返ししよう!」


「あぁ、さてと外へ行ってみるか」


「通路で待っていていい?」


「あ~、俺1人でやるつもりだけど、やばかったらヘルプ頼んでいい?」


本当は強打だけで、どれだけできるのか不安なんだよな。

1人でやると言ったけど。


「ふふっ、良いよ。任せて! 私の時もお願いね」


私は超音波攻撃以外の攻撃方法を探そう。

ラルグにばかり負担を掛けられないしね。

それに、攻撃方法はいっぱいあった方が便利だろう。

今の攻撃は広範囲で遠くにも攻撃できる。

だったら、狙うのはラルグみたいな強打とか殴ったり蹴ったりする攻撃?

羽を広げてみる。

薄い膜が張ってある羽。

鳥とは違う。

これで殴るの?

折れそうだな。

足を見る、ほっそいな~。

殴る蹴るの攻撃は無理かも。

何か違う攻撃方法ないかな?

剣とか? 鞭とか?

いやいや、どうやって持つの? 足?

て言うか鞭って何!?

前の私にそんな趣味ないから!


なんでアルフェの奴は飛びながら呻ってるんだ?

何か考え込むようなことでもあったか?

あっ、ふらついた。

もしかして体力が戻ってない?

……大丈夫か?


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