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強制的魔王  作者: ほのぼのる500
魔王誕生
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1話

ふっと意識が戻った感覚がした。

だが真っ暗で何も見えない。

体を動かしたが、なぜかそれが出来ない。


『『あれ?』』


俺の体、どうなっているんだ?

動かしたはずなのに、動いた感覚がない。


『『それにここはとても暗い。何も見えない』』


私、どうなっているんだろう?

気持ちが悪いな。

何も見えない恐怖がふつふつと襲ってくる。

ギュッと体を抱きしめたいのにそれも出来ない。


『『誰か、いないのか』』


そう言えば、俺は喋っているよな?


『『誰か……』』


あれ、声が2重に聞こえる。

それに声が出ていない。

どうやら声は、直接頭に響いているようだ。

私の体はどうなっているんだろう?


『もしかして死んだの?』


『そうかもな』


ん?

あれっ?


『『あなた誰?』』


私の傍に誰かいる。

俺の近くにいる子は誰だろう?


「はぁ~、また死にましたか。早いですね。そろそろこんな遊びも終わって頂きたいものですね」


「あの御方の暇つぶしにもなっていないのに、まだ続けるのですか?」


「『終われ』という命令がこない限りは、続けるしかないのですよ。めんどくさい」


『『誰かが来た!』』


不意に耳に届いた私たち以外の声。

でも、なんだかとても冷たい声で怖い。


「次はこれですか?」


「はい、適当に持ってきました。どうせすぐに死ぬし」


『『死ぬ?』』


ということは、俺は生きているのか?

だが、体が動かない。


「まぁ、どれでも一緒ですよ。さて、準備に取り掛かってください」


「はい。すぐにリンクできます」


嫌だ、この声は嫌だ、怖い。

怖い、怖い、怖い、逃げたい。

何処かに隠れたい、隠れさせて!


『準備? リンク?』


あれ?

……一緒にいた子が消えた?


「準備完了しました。リンクします」


「はぁ、さて次の駒を送り出しますか」


ふわりと何かに包まれた感覚がする。


『何が起こっているんだ? それになんだか気持ちが悪いな』


「初めまして、魔王に選ばれし者よ。この手を取ってその道を突き進みなさい」


『はっ?』


さっきの声と今の声、一緒だけど雰囲気が違う。

なんだか怪しい奴だな。


「なんだ? どうして手を取らない?」


『誰だ? 何が目的だ?』


「何? ……おい、確認しろ。自我残っているぞ」


「えっ、そんなはずは」


『じが? 何の事だ? 説明しろ!』


「はぁ、とっとと処理しろ。無理なら次の駒でいい。これでなくてもいいんだからな」


「あっ、大丈夫です。すぐに処理できます」


『おい、処理ってなんだよ。聞こえているんだろ! 説明しろ! おい!』


「はぁ、うるさいですね。どうせここで話しても消すので意味がないですよ。あなたは魔王として成長して戦って戦って最後には殺されるのです。分かりました?」


『戦って死ぬ? 魔王?』


どういう事だ?

魔王って、小説とかで出てくる悪役?

戦って死ぬって事は勇者に殺されるのか?


『嫌だ。そんな者になりたくない!』


「まだですか?」


「あと数分です」


「次の駒は?」


「次はまだ時間がかかるので」


『おい!』


「うるさい!」


『『ひっ!』』


「ん? 今、声が2つ聞こえませんでしたか?」


「えっ、聞こえてないと思いますよ。あっ、準備できました、消しますね」


『おい、何を消すつもりだ?』


「気のせいか。まぁいい、どうせただの駒に成り下がるのだから」


『おい、何をするんだ! おい!』


ガツンと痛みが走る。


『グッ』


響き渡る痛みに声すら出ない。

次の瞬間、スーッと何かが出ていくのが分かった。

大切な何か。

急いで手を伸ばそうとするが、体が動かない。


『駄目だ、消えるな! …………』


「始めるぞ」


周りに暖かな光が満ちる。

不意に意識がはっきりとした。

そして目の前には、白い服を着たとても綺麗な男性。


「初めまして、魔王に選ばれし者よ。この手を取ってその道を突き進みなさい」


『魔王』


そうか、魔王になるのか。

そうだ、魔王になって世界を手にしたい。


「強くなって、そして世界を手にしなさい。さぁ、手を取って」


『あぁ、俺は魔王になる』


差し出された手に手を伸ばそうとするが、違和感を覚える。

伸ばすはずの手が何処にもない。

代わりに、黒い煙が目の前の男性の手にそっと触れた。


「今、魔王が誕生する」


男性の言葉が頭に響く。

ふっと意識が途切れる。


『魔王になったのか?』


「魔王として強く成長してくださいね。そしてあの御方を楽しませるのです。それが駒の役目なのだから。まぁ既に興味が薄れ、見ていない可能性の方が高いですがね。それでも生きるためには強くなるしかないのです。弱ければ殺されるだけなのだから。いずれ死んで消滅する時まで、あがいてください。とはいえ、本当にいつまでこんなお遊びを続けるつもりなのか。飽きたのなら終わればいいのにね。さようなら、もう2度と会う事は無いでしょう」


男性が遠ざかっていく気配がする。

何か重要な事を言っていたような気がするが、理解できない。

いや、気にしなくていい。

俺には必要ないモノだ。

俺は魔王として生きていくのだから。

スーッと意識が遠くなっていく。

次に目が覚めたら魔王として強くならなければ。

誰よりも強く。


『ねぇ、大丈夫? どうしたの?』


なんだ?

眠りを邪魔するな。


『ちょっと、寝ないでよ。何かやばい気がするから。起きろ!』


何なんだ、どうして俺の眠りを邪魔するんだ。

俺は魔王なんだ。


『聞けよ! 起きろ!』


『うるさい! だいたいお前は誰なんだ』


『それはこっちの台詞。あんたこそ誰よ!』


『俺は魔王だ!』


『中二病か!』


『何を言うか! 俺は選ばれた者だ! 中二病などとほざくな!』


あれっ、中二病?

なんでこんな言葉を知っている?


『馬鹿じゃないの、さっきの怖い奴に惑わされて。頭、大丈夫?』


『貴様、あの御方をよくも貶したな』


『あの御方ってあの怖い声の奴の事? 私たちの事、駒って言ってた奴だよ?』


『馬鹿な事をいうな、あの御方は私に新しい役目をくれた。尊い方だ』


『洗脳でもされた?』


『されるわけないだろう。馬鹿な事をいうな。それよりこの場所は私の場所だ、出て行け』


『この場所は私の場所でもあるの! 出て行くわけないでしょ!』


何なの、こいつ。


『ねぇ、本当に大丈夫?』


『心配されるいわれはない。とっとと出て行け。早くしろ!』


『だから無理なんだって。そう言えば、何かあんたから出てきた物があったから掴んでおいたけどいる?』


隠れたいと思ったら、何かに包まれて隠れられた。

しばらくするとぎゅと押し潰されるような痛みがあって、そして隠れた何かから何かが離れていく感覚がした。

その時『駄目だ、消えるな!』と聞こえたから手を伸ばした。

伸ばす手はなかったみたいだけど、でも何かが私の中に入って来た。

これってきっとコイツの物だと思う。


『いらない』


『いや、いるでしょ。だって、あんた消えるなって叫んだじゃない』


『知らない。魔王には不要だ』


『魔王、魔王って……とりあえず返すし』


しかしどうやって返せばいいんだ?

なんとなくそれがどこにあるのかは分かる。

ん~、自称魔王が傍にいるのも分かる。

返れって念じてみるか?


『返れ、返れ、返れ』


『グッ……貴様何をした!』


ん? 

あっ、私の中から消えてる。

ということは成功したの?

それに驚きだ。


『『……………………』』


『生きてる?』


『あぁ』


『大丈夫?』


『……死にたい』


『はっ?』


『魔王になるとか……頭がどうかしてるだろう』


やっぱり洗脳だったの?

というか、もう大丈夫なのかな。

あの何か分からないモノは、やはり大切なモノだったということなのかな。


『はぁ~、分からない事だらけだ』


2020年1月より新作となります。

更新は書けたら更新なので、次回更新は不明ですが気長によろしくお願いいたします。

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