98話 死闘①
朝早くに目が覚めた。
特に予定がなかったのでギルドに行き、ちょっとした思いつきで馬を借りて出かけることにした。
昨夜はチェンバレン大公に誘われて2時間ほど一緒に酒を飲んだ。
テレジアも同席をしていたが、学院の課題があるというので残念そうな顔をしながらも先に自分の部屋に戻っていった。
頃合いを見計らい、大公が飲んでいる水割りのおかわりを作る度に濃い目に仕上げていって酔い潰し脱出した。
「泊まっていけば良いぞ。」
と言っていたが、知らない間に既成事実を捏造される気配を感じて自己保身に走ったのだ。
あれは正当防衛だ。
誰が何と言おうが正当防衛だ。
俺は悪くない。
馬を走らせて数時間後、俺は初めてこの世界に降り立った場所に来ていた。
ギルドで当日のアッシュ達の巡回経路と地図を見比べた。
目星をつけた地点に大して迷うこともなくたどり着くと、数日前と同じ景色が広がっていた。アッシュと出会った滝が良い目印になったのだ。
相変わらず緑の濃い香りがする。
ここに来た理由は何かの手がかりがないかを探すためだった。別に元の世界に戻りたい訳ではない。
なぜこの世界に来ることになったのか。それがわかるのであれば知っておきたいと思っただけだ。
特に意味はないのかも知れないが、暇潰しにはなるだろう。
周辺を散策するが何も見つからなかった。
あの時も多少の混乱はあったとしても重大な何かがあったのなら見落としている可能性は低い。
無駄骨か。
そんなことを考えていると、魔族と闘った場所に来ていた。
争った後は残っていたが魔族の死体は消えていた。獣がさらっていったにしては痕跡がない。
不自然な状況に警戒を強めていると、ソート·ジャッジメントが反応した。
明確な邪気を感じる。
こちらの気配に気づいて近づいてくる魔族を待つことにした。
俺の魔族との遭遇率は異常だ。
それとも何か理由があるのだろうか?
わからないことは悩んでも仕方がない。そう思っていると、上空から猛スピードで降りてくる魔族がいた。
青銅色の肌に赤い髪。
離れた距離からでも見下すような赤い瞳がやけに目についた。
体格はデカイ。
3メートル級か?
わざわざ待ってやる必要はないな。
俺は上空に向かって風撃無双を撃ち出した。




