94話 スレイヤーのお仕事⑬
午後からはギルドに戻ってアッシュの執務室を訪れた。
「ずいぶんと女の子に好かれてるな。」
ニヤニヤ笑いながらアッシュが冷やかしてきた。
「誰かさんが余計なことを言うから野郎共は怖がって近づいて来ないんだよ。」
「誰かさんって···もしかしてラルフか?」
お前だよ、お前。
「まぁ、あれだけの強さを見せた上に実績も上げてるからな。近づきがたい気持ちもわかる。」
「そうなのか?」
「俺も同じような感じだった。」
「模擬戦ばっかりやろうぜって言い過ぎたんじゃないのか?」
「···なんで知ってるんだ?」
当たりかよ。
それは自業自得だ。
「それで明日の準備って具体的に何をするんだ?」
「まぁ、何を話すかの摺合せだな。押収した証拠品の取り扱いも含めて。」
その後、2人で打ち合わせを行い、夕方には帰路についた。
翌日。
チェンバレン大公とターナー卿は真夜中に街に到着したらしい。
面談は午後からチェンバレン大公の別宅で執り行われた。
午前中に使いの者から連絡があり、アッシュと2人で所定の時間に出向いたのだ。
「久しいな、アッシュ·フォン·ギルバート。」
「大公閣下、ご無沙汰しております。」
貴族式の挨拶を行い、席に着いた。
チェンバレン大公の別邸は落ち着いた調度品で揃えられており、過度な装飾はされていない。質実剛健といった感じで風格が漂う。
「君がタイガ·シオタか?」
大公が話しかけてきた。
チェンバレン大公の隣に座った頑健な男性がじっと俺を凝視している。ターナー卿だ。
「はい。」
「想像と違って線が細いな。魔族を素手で倒すと聞いたが、あれはただの噂か?」
「想像にお任せします。」
俺は睨みつけるように目線を据えるターナー卿から目を逸らさなかった。
「···ふむ。デビットは気持ちの整理がついていないか?」
「···失礼しました。冷静に··とは思っておりましたが、やはり息子の命を奪った者を前にすると事情がどうであれ疑念が頭の中に渦巻いてしまいます。」
ターナー卿は瞼を閉じて深呼吸をした。そして、決意したように口を開く。
「聞かせてもらえないだろうか?マイクの最後を。」




