89話 スレイヤーのお仕事⑧
オーク達が一斉に襲いかかってきた。
先程と同じ奇襲であと2体は倒せたが、追いつかれて囲まれそうになった。
自分だけなら回避できたかも知れない。でも2人を置いて逃げるわけにもいかず、パティはオーク5体に完全包囲される前に岩壁を見つけて背にすることにした。これで敵からの攻撃は前方の180度からに限られる。背中から攻撃をされないだけでもマシだ。
前衛にパティと剣を使うシス、後衛に魔法士のテスという布陣。
万全ではない。
圧倒的に戦闘経験が少ない姉妹は膝を震わせ、半ば戦意を喪失させている。
パティ自身も強がって耐えてはいるが、複数のオークが同時攻撃を仕掛けてきたら逃げ場がない。
タイガ···助けてよ。
そう思った時に左方からすごい勢いで木が飛んできた。
枝木とか丸太ではない。
広げた枝に葉を繁らせた木そのものが横から飛んできてオーク達に激突し、その勢いで3体のオークが薙ぎ倒されて下敷きになった。
「「「!」」」
3人が呆気にとられる。
普通では考えられない事象が起きて自分達を助けたのだ。
魔族を倒した後、タイガはオーク達に追い詰められている3人をみつけた。
パティがうまく誘導し、岩壁を背に対峙しているが力で圧しきられると耐えられないだろう。少し距離が離れているのでこのままでは間に合わない。
タイガはすぐに前方にある手頃な木に目をつけた。
抜刀。
居合い斬り。
蒼龍で根本近くを横一線に斬る。
木がぶれて倒れる前に正面から前蹴りを全力で入れた。
木は地面と平行にまっすぐに飛び、その先にいたオーク達をなぎ倒して下敷きにした。
「なに?何が起こったの?」
先程まで恐怖に膝を震わせていた姉妹は突然の非現実的な出来事と数を減らしたオークを前に落ち着きを取り戻しつつあった。
逆に驚愕で身を竦めたオークにパティが斬りかかり、一番近くにいたオークの首をダガーで斬りつけ絶命させた。
残り一体は形勢が逆転したことにあわてふためき、一目散に逃げ出す。しかし、逃げた方向からの予想外の回し蹴りが横っ面を薙ぎ、首を変な方向に曲げて崩れ落ちる結果となった。
「やっぱりタイガだ。あんなめちゃくちゃなことをするのは他にいないもんね。」
パティはにっこりと笑い、姉妹は安堵のため息をついた。




