88話 スレイヤーのお仕事⑦
一直線に山間を突き抜けて魔族の元に向かう。全力での移動なので300メートルの距離はほんのわずかな時間で走破できる。
見えた。
邪気の中心部となる位置に青銅色の個体がいる。こちらに視点を合わせ、嘲笑しているように見える。
10メートルほど手前で立ち止まった。
「ほう、動きが我ら魔族並みだな。人間にしては素晴らしい。」
余裕の態度だ。
口元の笑いがムカつく。
「なぜここにいる?」
「ふん、我がどこにいようと貴様達下等生物の知ったことではない。」
尊大な口調だが、絶え間なく俺の動きに注意を払っているのは気配で感じていた。
「数日前にお前と同じような魔族が人間を後ろから襲おうとしていたから殴り倒してやったぞ。」
わずかに表情が動いた。
「貴様か。ディールをどうした?」
「さあ、どうなったんだろうな。」
「ふん。余裕ぶっているが仲間がどうなっても知らんぞ。オーク共は人間をなぶり殺して食らう···。」
魔族が話している途中に背中の蒼龍に手をかける。
抜刀。
風撃斬!
「ふん、この程度で思い上がるなよ。」
魔族が片手で魔法を撃ち出して風撃斬を相殺した。
斬!
「···な··に····。」
風撃斬はただの囮だ。
魔族が気を取られたすきに側面に移動して十字に斬り捨てた。
ここに来た理由がわかれば用はない。殺しあいに話が終わるまで待つなどバカがすることだ。
すぐに反転してパティ達の元に駆け戻る。
タイガが去った後、魔族は4片に分断されて地面に崩れ落ちた。
オークだった。
パティは魔法士のテスに離れた位置から先制の魔法を撃たせる。同時に前方にいた2体に斬りかかった。
1体が魔法の直撃を受けている間にもう1体の攻撃を避けて胸にダガーを深く刺し、反動を利用して魔法でダメージを負った残る一体を斬り伏せた。
オークは動きが俊敏ではない。
身体能力強化魔法とテスの魔法により奇襲が成功したのだ。
だが気を緩ませずに反転して2人と共に距離を取ることにした。
オーク達に近づいたことで正確な数は索敵で把握ができていた。
残り7体。
囲まれたら終わりだ。
動きは鈍くともオークには力があり、巨体だ。
退路を塞がれる訳にはいかない。
パティは極力冷静に頭を働かせてヒット&アウェイでタイガが戻って来るまでの時間を稼ぐことにした。




