87話 スレイヤーのお仕事⑥
2時間ほど歩いてから昼食を取ることにした。
ギルドで購入しておいたプラムケーキを切り分けてみんなで食べる。
プラムケーキは魚に飽きた船乗り達が好んで食べるものだ。
酒漬けにしたブドウが入ったもので、焼き上がりに生地の表面にブランデーを塗っている。保存性と栄養価が高く、甘いものをあまり得意としない男性であっても、ブランデーの香りが食欲を刺激するので疲労回復のための携行食として重宝されている。
ターニャの弟が歓迎会で作ったものが大好評となり、ギルドがスレイヤーの携行食として採用することにしたようだ。おかげで毎日の仕込みが大変なようだが、経営的には潤いそうだと母親も喜んでいた。
「おいしい!」
パティとシスから感嘆の声があがった。テスも言葉は発しないが美味しそうに食べている。
「!」
邪気を感じた。
しかも多勢だ。
俺のソート·ジャッジメントの反応では先日と同格の魔族が1人、それにレベルが格段に落ちるが邪気を放つ生物が約10体いると示していた。
距離は魔族が西方に約300メートル。他は北西で散開している。
近い。
「パティ、索敵をかけてくれ。魔族だ。」
混乱を避けるために落ち着いた声で言う。
「······何これ!?めちゃくちゃいる!!」
「落ち着け。強力なのは西方の一体だけだ。奴は俺が対処する。パティは2人を頼む。無理に戦おうとはするな。」
そう言うなり、俺は西方の敵に向かった。
「あっ!タイガ!!」
パティが名前を呼ぶが躊躇はしていられない。短時間で魔族を倒し、3人の元に戻らなければならない。俺は全力で木立の中を走り抜けた。
「行っちゃった···。」
パティはタイガの圧倒的な強さを知っている。魔族をさっさと倒して戻って来てくれるとも思う。とは言え、10体近い魔物を1人で相手にしたことはさすがにない。あとの2人はランクDの新人スレイヤーで彼女等を庇いながら戦うのはさすがに厳しかった。
不安だよ、タイガ···
2人の前なので声には出さなかったが、内心ではそう感じていた。




