72話 学校に行こう⑨
「なぜ貴様がそれを知っている。」
ゆっくりとこちらに顔を向けて、かすれた声でターナーは答えた。
ああ、やってしまった。
どうやら俺は地雷を踏んでしまったようだ。
ホラー系の映画や小説なんかで良くある設定だ。
別の生命体の血や細胞を何らかの形で体の中に取り入れて化物になるやつ。
薬学を学んでいて微かな邪気を発する男。
魔族と人間の混血児として生まれたと考えるよりも現実的だった。
ターナー家は侯爵の位を持ち、騎士団長を何度も輩出した代々が武人の家系だ。現在の騎士団長も当主が勤めている、と図書館の本に載っていた。
そんな家系に魔族が混じっているとなると、王城や教会にいる聖属性魔法士が気づくはずだ。
「なぜそうなった?」
ターナーの眼には狂気が宿っていた。邪気が増していく。
「············。」
互いに無言でにらみ合う。
「タイガっ!」
膨らんだターナーの殺気に反応したパティが武器を抜く。
パティに気をとられた一瞬でターナーが跳躍。
数十メートル先のグラウンドに降り立ち、生徒達に向かって吠えた。
「グゥオアアアァァァァァーっ!」
突然の出来事に生徒達は呆気にとられ、ターナーを凝視している。
「タイガっ!まずいよ、あいつの魔力が増幅してる!!」
パティがそう叫ぶと同時に俺は全力で走り出した。
生徒達とターナーの距離はおよそ30メートル。
すぐに魔法が発動され、100はあろうかという氷柱が空中に発生した。そのまま高速で生徒達の中心にいたテレジアを襲う。
教職員であるターナーから突然の魔法が発動され、生徒達は何が起こったのか理解できていない。フェリやテレジアも含め動けなかった。
その時、迫る氷柱と生徒達の間に割り込んだ黒い影。
正面から迫り来る氷柱を見て死を意識したテレジアは自分の前に突如として現れた広い背中を見た。
「タイガさんっ!」
両手に警棒を持ったタイガは後ろの生徒達を守るように氷柱を叩き落とし始めた。




