64話 学校に行こう①
ギルドマスターの執務室を訪れた。
執務机には昨日よりはマシになったとはいえ、口をたらこのように腫らしたアッシュがいる。
「ぷっ」
「笑うなよ。」
「少しマシになったみたいで何よりだ。ぷぷっ。」
昨夜の歓迎会でアッシュの食べている料理に激辛スパイスを入れたのは俺だ。
まぁ、いろいろとやらかしてくれたので軽い意趣返しのつもりでやったのだが···入れた激辛スパイスが強烈だったようで、火を吹くような反応のあとにみるみる唇が腫れ上がったのだ。
「ぷぷっ···何その唇!」
そこにいた全員が吹き出した。
リルやフェリなんかは笑いすぎて腹筋がつりそうになり、お腹をヒィーヒィー笑いながら押さえていた。
「しかし誰があんなことをしたんだ?」
「さあな。それより要件を聞こうか?」
無理やり話をそらした。
まぁ、アッシュは天然だし、人が良いからすぐに忘れるだろう。
「リルが申請していた身元保証の件だけど、これを渡しておこうと思ってな。」
アッシュは唇を気にしながらカードを渡してきた。
「これは?」
「いろいろと考えたんだが、おまえは信用できるし、実力も申し分ない。だからギルドマスター補佐になってもらおうと思ってる。」
「え?」
「大した仕事があるわけじゃない。たまに式典や会議に出てもらうこともあるが、基本は任務があればそちらを優先してもらう。あとは俺が動けない時に魔族や魔物に対する警戒巡回や、スレイヤー間のもめごとの仲裁をするくらいかな。」
「良いのか?ギルド内で反対する奴もいるだろ?」
ニヤッと笑ったアッシュが嫌なことをカミングアウトした。
「大丈夫だ。すでにおまえは恐怖の対象だからな。反対しそうなやつらにはいろいろと吹き込んでおいた。」
それを聞いた瞬間、激辛スパイスの件で芽生えていた小さな罪悪感は完全に消え去った。
アッシュ、おまえという奴は···




