62話 閑話 ~Side ニーナ 刀工の喜び①~
いつものように鉄を打つ。
満足がいくまで鍛え続けることで剣という武具を最上のものにしていく。
父に師事をしてからもう12年になるが、打ち手として本当に満足ができた武具は数本でしかない。
スレイヤーが活躍する街で店を開いているので剣の需要は高い。
でもニーナが本当に打ちたいのは剣ではなく刀だ。
玉鋼から鍛え、美しい刀身に仕上げていく。
剣とは違い、高い技術がなければ打つことすらできない。父からは刀で業物を打てたら一人前だとよく言われた。
ニーナが作りたいのは上部から紙を落とすと刃の鋭さだけで2つに両断される、そんな業物だ。
刀の美しさに魅せられたスレイヤー、特に女性が刀を欲しがる。
でも売らない。
剣とは違い、使い手も高い技術が必要なのだ。
一度振っただけで折れたり、刃こぼれを起こさすような人には刀は使わせない。
この国で最強のアッシュに試し斬りをしてもらったことがある。だが、結果は同じだった。
それほどの剣士ですら刃こぼれを起こさせる。
そもそも、剣と刀では扱い方がまったく違う。
レイピアなどの刺殺用の剣はともかく、自重で叩き斬るような一般的な剣の技術では刀は何の意味も成さない。
使いこなせる者が現れないだろうか?
ニーナは自分が鍛えた刀の本当の斬れ味を知りたかった。
ある日、幼馴染みのリルが1人の男性を連れてきた。
背が高く、細身。
体幹が強いことは体の動きでわかる。
掌に独特のマメがあり、左手には特徴的な傷が微かにではあるが見てとれた。
心臓がトクンと普段よりも大きく鼓動する。
もしかして···。
「ふ~ん、これって刀を振ったことのある手だよね。」
思わず聞いていた。




