59話 閑話 ~歓迎会⑦~
修練場にあった打ち込み用の丸太をセットした。
直径が20センチくらいある。無手による打撃練習用のものだ。
「え···まさかそれを斬るつもり?」
ニーナが心配そうに聞いてきた。
普通に考えると刀で斬ろうとすると刀身がもたない。
「大丈夫。折ったり刃こぼれをさせたりはしない。」
「···わかった。タイガの腕を信じる。」
ニーナは腕の良い刀工だが、刀の本当の切れ味を知らない。
そもそも使いこなせる者がいないのだから当然と言える。
刀は銃弾をも切断する。
鉛でできた拳銃弾なら素材が柔らかいので大した力もいらない。
鉄製の甲冑や竹、丸太を斬ったことがあるが、刀身に余計な負荷がかからなければ恐ろしいほどの切れ味でスパッと斬れるのだ。
いかに集中して斬るか。
斬線をぶれさせることなく斬るか。
ただそれだけだ。
刀工が魂をこめて刀を鍛えるのと同じように、剣士は一瞬にすべてをこめる。
間合いを計り、呼吸を整える。
ゆっくりと腰を落とした。
ギャラリーが沈黙する。
抜刀。
居合い抜き。
青い稲光のような線を描き、一瞬後に鞘に納める。
ゆっくりと刀を仕舞い、最後に鍔を鳴らす。
カキィン。
「·······················。」
丸太に変化はない。
「なんだ?はずしたのか?」
「何か青い光が見えなかったか?」
ギャラリーがざわつく。
俺は気にせずに左手に持った大太刀を目線まであげて鞘を見る。
「さすがニーナ。鞘の調整も完璧だよ。」
振り返って笑顔でニーナに話しかけた瞬間、
ゴッ!
斜めに断ち斬られた丸太が地面に落ちた。
「「「「「!!!!!!」」」」」
その場にいた全ての者が呆気に取られていた。




