49話 異世界生活の始まり⑯
「あとは任せてくれていい。」
そう言ってターニャの母親から借用書の控えを預かった。
本当は賃貸契約の後にと思っていたのだが、向こうが早々に事務所に来いと言うのならさっさと終わらせてしまおう。
親子にはものすごく感謝されて頭を下げ続けるので少しお願いをしてみた。
「部屋を見せてもらっても良いですか?」
家具を揃えたいからだと伝えて鍵を借りた。
昼時なので2人に手間をかけさせないように、
「勝手に見て鍵だけ返しに来ます。」
と言ってフェリ達と3階に上がった。
「結構広いね。」
何もない空間なのでよけいに広く感じるが、20畳ほどのLDKと8畳の個室があった。バスとトイレは別れている。
以前は学生が住んでいたと言うが、贅沢すぎないか?
「クローゼットがあるから収納ダンスだけでいいわね。あとはベットとダイニングテーブルくらいは買わないとね。」
リルがそんなことを話してくるが、何か新婚さんみたいで楽しい。
「賃貸のお部屋ってこんな感じなんだぁ。」
興味津々でフェリがいろんなところを見ている。
「本棚も必要だな。」
「読書が好きなの?」
「うん。エッチなやつとか。」
「「···最低。」」
ハモって軽蔑された。
ジョークなのに···。
一通り部屋を見た後に鍵を返して賃貸契約を明日に行う約束を取り付けた。
仕立て屋に向かう。
こちらもリルが知っているお店だった。
「タイガの体格ならフォーマルウェアとか似合いそうだよね。」
「そうねぇ。細身だけど、手足も長いし肩幅もあるからどれでも似合いそう。」
ここでの俺はほぼ着せ替え人形状態だった。
2人が楽しそうだからまぁ良いか。
こちらの世界のフォーマルウェアは派手な色が基調とされている。
タキシードなどのダーク系スーツは執事などの従者が着る服装のようだ。
貴族が基準だからそういうものなのだろう。
シックなものが好みだという主調が通り、光沢のある黒系にネイビーの装いがされたものと、白地に赤で装飾がされた二着をオーダーした。
「ちょっと地味だけど、シンプルで良いかな。」
いや、どこがシンプルなのっ?
派手じゃね!?
とツッコミたかったが、これがこちらのスタンダードなのだからそれに合わせよう。




