47話 異世界生活の始まり⑭
「いっ、1000万っ!?」
フェリもリルも耳を疑っている。
剣の価値は高いものでも30万ゴールド程度。宝石などの装飾が施されたものだともっと値は張るが、それは武器ではなく宝飾品の部類になる。
刀の価値が高い理由は、作り手である刀工が鍛治や研磨の技術を極め、一般的な剣よりもはるかに複雑な工程で刀身を鍛え上げることにある。
作るのではなく鍛えると言われるのは魂を擦り込むと同意義でもあるのだ。
刀身のバランス、扱いやすい重心、切れ味など、この大太刀も最高峰と言って良いレベルに仕上がっていた。
「安かったかな?」
そう言うと、ニーナは満面の笑みでこう返してきた。
「もぉ···本当に大好きだよタイガ!」
感極まってスゴいことを言うニーナ。
そして、
「···え···ええー!?」
何かを勘違いしたフェリがいた。
「この大太刀の価値をわかってるし、使いこなすこともできる。タイガならただで譲っても良いよ!」
「···いや、それは逆に困るんだが。」
テンションMAXのニーナをなだめるのに苦労した。
蒼龍は生半可な使い手が振っても稲光のような青い線は出ないそうだ。
理想として思い描いていた太刀筋を見せた俺をニーナは剣士として惚れ込んだということだ。
残念ながら異性としてではない···本当に残念だが···。
「刀の部類としては重量も長さもあるし、剣になれた人が振ってもあんな空気を裂くような音はしない。使いこなしてくれる人が実在するなんてうれしくって···。」
何か涙眼になってる···
でもほら、やっぱりって感じだろ?
そんなモテ期なんかに縁はないから···自分で言ってて悲しいが。
「私の方からお願いするよ。タイガに蒼龍を使ってほしい。」
何かと渋るニーナを説得し、最終的に支払った額は300万ゴールド。
個人的にはそれでも安い買い物だと思う。
命を預ける武器はちょっとした能力差で持ち主の生死を分かつものだ。だからこそ高い価値をつける事ができる。
「俺が適正な代金を支払うのはニーナの技術と心意気に高い価値をつけたからだ。ただで譲ってもらうことはそれを冒涜することだと思ってる。くだらないこだわりかもしれないけどね。」
最終的にニーナはその言葉で納得してくれた。
「ますます気に入ったよ。何ならつきあう?」
そんな冗談を言いながら。
その様子を見ながら
「うう···ライバル増えたぁ···。」
フェリは一人で落ち込んでいた。




