374話 そして、エージェントは伝説となる⑩
タイガはゆっくりと身廊を出て、窓から外に出た。
地上階のため、大した高低差はない。
「神アトレイク。」
『なんだ?』
「この鎧を脱ぐには、どうしたらいい?」
『気に入らないのか?』
「前がよく見えない。」
フルプレートだ。
兜には、視界を確保するための工夫があるが、視野が極端に狭い。気配を読んで闘うこともできるが、万全で挑みたい。自分がいた世界には、一般社会で鎧を着ることなどないので、ただただ動きにくいのだ。
『仕方がないな。もう一度、同じ言葉を叫べばいい。』
マジか。
恥ずかしい。
「なんでやねん!」
再び、発光して元の姿に戻る。
目の前には、顔を真っ赤にした魔人が立っていた。あと数歩で間合いに入る。
「貴様っ!ふざけた真似を!!」
「神界では決闘を申し込む時には、あれをする。」
『いや、そんな慣習はないぞ!』
神アトレイクから、ツッコミを入れられた。
「戯言はそこまでにしろ!」
魔人のこめかみに血管が浮き出てきた。激怒した様子。
「大司教と何を企んでいる?」
「死ぬ奴になど、教えるか!」
爆発的な動きで、魔人が間合いを詰めてきた。腰の剣が抜かれる。
速い。
間一髪の所で、右上段から振り下ろされた剣を避ける。剣圧だけで、修道士の服が裂けた。
ガッ!
上体の動きに連動した蹴り。
腕でブロックをしながら、後方に跳んだ。衝撃を殺したはずだが、ブロックした腕が痺れる。
強い。
近接戦闘においては、これまでの魔人とは比較にならない。
「ほらほらっ!どうした!!防戦で手が一杯か!!」
剣による絶え間ない、連撃。
間合いが詰まると、肘や膝などの体術も併せてくる。
確かに、素手のタイガでは、かわすことで精一杯だった。




