370話 そして、エージェントは伝説となる⑥
眩い光を発したタイガに、身廊にいるもの達は、皆動きを止めた。
「えっ!?タイガ?」
何が起こったのか、理解が追いつかないフェリ達は、発動していた魔法を無意識に解除した。教会本部には武器を持ち込めないので、5人は専ら魔法による攻撃で応戦をしていたのだ。
同様に、相対していた聖騎士達も動きを止めていた。光がおさまるにつれて、ありえない姿が視界に入り、ついには膝をつく者達も現れだした。
「やはり···タイガ殿は···本物の英雄なの···だな。」
エクストラ·ヒールで急速に回復していたクリスティーヌは、意識を取り戻し、タイガの姿を見た。そして、これまでの自分の考えが正しかったと、勘違いをするのだった。
「クレア、あれがあの方の···真の姿か。」
「え···えと···どうかな···。」
姉が回復したことへの喜びは大きい。だが、クレアには事の経緯を説明するのが難しかった。何せ、神が絡んでいるのだ。
「それよりも、体調はどう?何ともない?」
詳しい話は後回しにして、話をすりかえた。
「かなり出血をしていたからな。万全ではないが、大丈夫だ。ありがとう、クレア。」
「お礼ならタイガさんに言ってあげて欲しいな。私たち二人を、ここまで連れてきてくれたのは、タイガさんだから。」
そう言われた瞬間、うっすらとした記憶の中に、お姫様抱っこをされた自分を思い浮かべる。
「う···。」
「どうしたの!?お姉ちゃん。」
急に悶えだした姉を見て、少し心配になったが、顔を真っ赤にして嬉しそうに笑っているのを見て、放っておくことにした。たぶん、タイガにお姫様抱っこをされたことを、思い出しているのだろう。
クレアは、タイガを見た。
ようやく光がおさまり、その姿が露になると、そこには凛とした漆黒の鎧が現れる。
「テトリア様···。」
身廊にいるほとんどの者が、気づいていた。クワイヤの左手に見える彫像と、光の中から出てきた鎧姿の男が同じ装いであることを。
「テトリア様だ····テトリア様の再臨だ!」
誰かがそう叫び、身廊内は一気に大騒ぎとなった。




