348話 エージェントの長い1日④
なぜ、コイツとこんなところで出会うのだろう?
しばらく顔を見なかったが、まさか修道士になっていたとは···。
テトリアの鎧を清掃することになったタイガは、案内役として他の修道士を紹介された。自分と同じ衣服を着たその男は、以前よりも顔のラインがふくよかになっており、雰囲気もやわらかいものへと変貌していた。
「いいガタイをされてますね。あなたも冒険者だったのですか?」
「いや···俺はスレイヤーだった。」
どうやら、あの男で間違いないようだ。
「スレイヤー···ですか。なぜ修道士に?」
「·················。」
「ああ···すみません。余計な詮索でしたね。私は元冒険者だったので、何か親近感がわいてしまって···失礼をお詫びします。」
「····いや、良いさ。俺はスレイヤーとして一流だった。将来はギルマスになる予定も立てていた。しかし···ある男が俺の人生を台無しにした。」
「人生を台無しに?それはひどい話ですね。」
「そいつは···"別の世界から来た"などとほざいてみんなの気を引き、俺の婚約者の気持ちまで奪っていきやがった。奴は···奴こそは魔人に違いない!」
···おい。
····俺の事かいっ!
それに、婚約者って誰っ!?
「魔人って···それは本当なんですか?」
「なんだぁ!同じ修道士のくせに、疑うのか!?」
ぷるぷる震えながら、いきなり凄んできた。情緒が不安定なのは変わっていないようだ。
「いえ···ですが、魔人と言えば少数と聞いていますし、なぜスレイヤーの所に···。」
「そんなことは知らん!奴が魔人でないはずがない。素手で魔族を倒せる人間なんているわけがないんだ···。」
ぶつぶつと何やらつぶやき続けている。危ない···。
「一つだけお聞きしたいのですが··。」
「ああ!何だ!?」
「その男が魔人かもしれないということを、教会本部には伝えられたのですか?」
「あたりまえだ。入信の時に、大司教様に思った通りのことを伝えた。貴重な情報を提供すれば、特別な計らいが受けられると思ったからな···それなのに···。」
「····················。」
おまえか?
おまえが有りもしないことを伝えたから、教会本部が罠を仕掛けたのか?
俺が剃毛するはめになったのは、おまえが元凶なのか?
なぁ、ラルフよ。




