333話 エージェントはやはりフラグに気づけない④
教会本部に到着したフェリ達は、来賓用の部屋に通された。
クレアとクリスティーヌとは、教会本部に入った時点で別行動となっている。
「リル、このまま素直に受け入れてくれると思う?」
「そうね···やんわりと追い出されるのじゃないかな。」
「やっぱそうよね···。」
クレアの護衛を兼ねて同行したのは、フェリとリル、ガイウスの3人だった。
「やはり、教会側は受け入れませんよね。タイガさんに魔人の嫌疑がかかっている以上、所属していたギルドと共闘、もしくは共同調査を行うことなど、了承をしないでしょう。」
「···ガイウスさん、タイガを過去形にしないでくれる。」
「やだなぁ。タイガさんはこれからの王国を支える逸材です。過去形じゃなくて、さらに飛躍する運命を背負っているので、現在進行形ですよ。」
「それって···どういう意味?」
フェリは急に不安にかられた。
ガイウスは一見、好青年である。優しげな笑顔と、物腰の柔らかさを持っているが、抜け目がない印象をフェリは強く感じている。さすが、チェンバレン大公の直系とも思えるが、タイガへの執着をこの数日間で垣間見て、何を企んでいるのかわからない要注意人物であると認識している。
「タイガさんの戦闘能力は凄まじいの一言です。でも、その強さの一端には、明晰な頭脳と、高い精神力が見え隠れします。魔族から王国を守護するスレイヤーの職務は重要ですが、あの人にはもっと大きなことを成し遂げる力が備わっていると言うことですよ。」
「それって···チェンバレン大公の一派に組み込む動きがあると言うこと?」
ガイウスの主張に、リルが口を挟んだ。
「テレジアと婚姻関係になれば、あるいはそうなるのかもしれません。ですが、タイガさんが王都に出向いた際に、国王陛下が直々に誘いをかけたようですよ。」
「「!」」
フェリとリルにとって、初めて聞く衝撃の内容であった。国王陛下の意図はわからないが、直々に誘いをかけたということは、要職や騎士爵以上の爵位を用意するという意味にも解釈できるのだ。
「···それで、タイガは何と答えたの?」
「断ったみたいですよ。スレイヤーとしての職務が今は重要だからと。」
2人はその言葉にほっとするも、先のことを見据えると、手放しに安心できるものではないことを感じた。
タイガはある意味で英雄である。
数多くの魔族を退け、多くの人々の平穏な生活を守った。そして、王城内での反乱分子を炙り出し、要職にあった一派を拘束するにまで導いたのだ。
本人にその意志がなくとも、その武力や機転を、政に利用しようとする者は必ず出てくるだろう。
そして、続くガイウスの言葉が、2人の不安にさらなる追討ちをかける。
「この件が無事に片付いたら、おそらく始まりますよ。タイガ·シオタ争奪戦が。」




