315話 依頼者タイガ·シオタ⑦
それを見つけたのは偶然だった。
カレー用のスパイスを探していたのだが、まさかアサフェティダに出会えるとは思わなかった。
アサフェティダは、インドでカレーを作る際に使われる香辛料だ。加熱すると、香りがとれてタマネギのような風味となる。
だが、加熱前の香りは強烈で、密封したビンにでも入れておかないとマズイ。非常にマズイ。異臭騒動で済めば良い方で、下手をすると、周囲の人間が意識を刈り取られる可能性すらある。
複数の揮発性硫黄化合物を含むので、ニンニク×ドリアンのような強烈な異臭を放つのだ。
別名"悪魔の糞"と呼ばれるのは伊達じゃない。本当に悪魔的なのだ。
タイガは小瓶を取り出し、風下に向かって軽く投げ、警棒で叩き割った。
すぐに風上の方に移動する。
立ち塞がる邪魔な盗賊は、前蹴りで吹っ飛ばし、進路を切り開いていった。
「く···さ···。」
「ごっ!」
「おえっ!」
「ふがふがふがぁ····。」
すぐに後方から阿鼻叫喚が吹き出す。
盗賊団の包囲を切り開き、抜け出した。
別の小瓶を取り出して、同じように風下に向かって割る。
今度は唐辛子のブート·ジョロキアパウダーだ。
「···········!」
「眼がぁ···ゲフッ···ガ···。」
刺激がきつく、眼つぶしや呼吸困難に陥るものが続出した。
タイガは、ダメージを負っていない者を居合いで始末していき、後に残った地面に転がって悶絶する者達には、警棒による打撃を与えて意識を刈り取っていった。
さすがに何度も実戦で使用していると、スパイスの使い方も堂に入っている。
こうして、盗賊団はほんのわずかな時間で全滅することとなった。
余談だが、後にタイガ·シオタはスパイス·オブ·マジシャンの二つ名をグレードアップされることとなった。スパイス·オブ·デビル、もしくはスパイス·オブ·ゴッドの名を欲しいままにし、畏怖される存在に至ったのである。




