281話 エージェントの真髄⑧
聖騎士団ではなく、タイガと行動を共にしていたスレイヤーや冒険者達が先に動いた。
視界の隅でそれを確認したクリスティーヌは、聖騎士団の不甲斐なさを嘆きながらも、この際、誰の助けでも構わないと感じていた。
まずは目の前の魔人を撃退、もしくは無力化することが第一なのだ。
クリスティーヌとクレアが攻めあぐねていると、魔人もガイウス達の動きに気がついたようだ。
「邪魔な虫どもがわいてきたか。まずはあちらから消してやろう。」
目の前の二人に向けて、片腕を上げて魔法を放ってくる。
地面から隆起した突起が矢のように飛んだ。
魔力を溜めることのない、明らかな牽制攻撃。
だが、魔人のポテンシャルで放たれたそれは、クリスティーヌとクレアを魔法障壁の展開で足留めにするのに事足りた。
魔人の魔力がこれまでにない勢いで一気に増幅していく。
「くっ···まずい。増援に来た者達を狙うつもりだ。」
「·····!」
ガイウス達も魔人の魔力に感づいたのか、分散して回避をはかりだした。
その距離、約1キロメートル。
「まとめて消し炭にしてやろう。」
魔人の左手から魔力の波動が溢れだし、強力な魔法が撃ち出されようとしていた。
「みんな!回避するぞっ!!」
ガイウス達一行は、魔人の魔力の動きに敏感に反応した。
膨大な量の魔力から、小さな街なら壊滅するほどの破壊力が発射されると判断したのだ。
「みんな散開して!魔法が放たれたら全力で障壁を展開!!」
アンジェリカが指揮をし、全員がそれに応じた。非凡な魔力を操る魔人に恐れこそはしていないが、危険を感じ取っているのだ。
「あれはまともにくらうと、即あの世行きね。」
誰ともなしに声を掛け合い、初めてとは思えない統率の取れた行動を示した。
「ふん、散開したところで無駄だ。広範囲に爆炎を見舞って···。」
ガイウス達の様子を見て呟いた魔人に、突如として背筋が凍るような気配が近づいた。
そして····
「だ~れだ?」
いきなり目を塞がれて、間の抜けたような声が耳に響いた。




