271話 聖女からの依頼⑦
小休憩とクレアからの説明を終え、スレイヤーギルドの街に向けて出発した。
謁見だけを済ませてさっさと帰るつもりだったが、仲間が増え、魔人という新たなテーマまで得ることになってしまうとは···ずいぶんと中身の濃い出張になったものだ。
このまま何事もなく帰れるのか、というのが率直な思いだった。
まず、教会が一枚岩として、クレアの行動に全面的に協力体制であるのかがわからない。もし違うのであれば、クレアの意見だけで魔人と疑われている俺を放置するとも思えない。
加えて、魔人の動きにも注意を払っておいた方が良いだろう。敵対する教会で特異な存在である聖女の今の行動は、現況を大きく有利にするチャンスと考えられる。もし、俺が魔人の立場なら、聖女を誘拐して人質として最大限に利用するかもしれない。やり方事態は吐き気がするゲスの極みだが、その効果は絶大だろう。
結論として、何者かが帰路で襲ってくる予感がひしひしとしているのである。
順調にスレイヤーギルドの街に近づき、あと半日で到着という所まで来た。
眼前には河川があり、そこを越えるための橋がかかっている。
橋への入口を遮るように、検問のような布陣が見えた。
「あれは···聖騎士のようですね。」
俺と並走するスレイドが伝えてきた。
「聖騎士と言うと、教会のお抱え騎士か?」
「そうです。鎧の胸元に十字の紋様があるので間違いありません。」
規模で言うと2~3小隊。
30人程度の集団が、俺達を待ち構えるようにしていた。
予感が的中したようだ。
「どうしますか?」
「とりあえず、一時停止をしてクレアに相談だな。その間に相手の動きも気にしておいた方が良さそうだ。」
最悪の場合は戦闘になるかもしれないが、そうなればスレイヤーギルドと教会の関係は間違いなく悪い方向へと進む。できればそれは避けておきたかった。
「間違いありません。彼らは聖騎士の中でも精鋭と呼ばれている人達です。」
「そんなのがいるのか?」
「はい。教会も長い歴史の中で迫害や政争に曝されることがありました。そのために、自衛手段を持っています。」
宗教が闘争に巻き込まれることは、どこの世界でも同じようだ。場合によっては、宗派の拡大を狙って、聖戦と名ばかりの自明の理を掲げての侵略行為を行うようなところもあるくらいだ。
「精鋭部隊の呼称は?」
「クルセイダーズです。」
···極めてベタなやつだ。
スペイン語で十字架をつけた集団、英語で社会活動家という意味だ。こちらの世界の言語は、不思議なことに俺にとって理解しやすいキーワードが多い。
···誰だ、ご都合主義とか言っているやつは?気にしすぎると2割増しでハゲあがるぞ。




