267話 聖女からの依頼③
「魔族を素手で倒せるスレイヤーの出現を噂で知った時は、必然的に教会での警戒が高まることにつながりました。数百年の過去の事例を調べあげても、それだけの戦力を持った一個人など、存在しなかったのですから。」
「それは俺が魔力を持っていないから実現できたことだと思う。魔法が効かないから、物理的な攻撃でしか対抗ができなかった。当然、素手ではかなり苦戦を強いられるしね。」
「はい。あなたを実際に見ていて納得ができました。武芸に秀でているのはもちろんですが、あなたの魔族に対する無類の強さは、魔力がないという特異性が一要因であると。」
なぜかうれしそうに話すクレアを見ながら、ふと、魔人とは俺と同じ転移者だったりはしないのかと考えていた。
俺が魔人ではないかと勘違いされたのは、人でありながら魔族に対する異常な強さ発揮した故だ。同じような転移者ならば、魔法は効かない。
だが、次のクレアの言葉がそれを否定した。
「これまでに魔人は個別の3体が確認されています。いずれも魔法に長けており、武芸に関しても並外れた技量を誇っていました。外見は人間と変わりませんが、冷血な性格であることも共通しています。そういった点では、あなたには武芸の能力以外に関して、魔人との共通点を見いだせませんでした。」
「俺のように、魔力のない魔人は存在しない?」
「はい。それにあなたは優しいです。魔人であるはずがありません。」
「まあ、人間だからな。人並みの感情は持っているよ。それよりも、魔族と魔人の見分け方というのはあるのかな?」
「魔族は人間に擬態をしたりもしますが、基本的に赤い瞳をしています。あとは、聖属性魔法士にしか感知できないかもしれませんが、魔族は邪気一色で、魔人には邪気に加えて悪意とも言うべき感情が多分に含まれています。」
悪意と言うのは人の感情だ。
マイク·ターナーの時にも同じことを感じたが、魔族は生まれながらにして勝ち組的な種族だから、人間を見下したりするのは悪意ではなく、必然的な感情だったりするのだろう。人間が他の生物に対して、意識せずに優越感を持っているのと同じだ。
「なるほど。人間にとって、本当に厄介な相手は魔族ではなく、魔人という感じだな。」
嫉妬や妬み、支配欲などを持つ人間の負の側面が、異常な力を突如として持つことになった魔人には顕著化する。人間の習性や習慣を理解しているだけに、張り巡らす策謀も闇深いものになるのかもしれない。




