264話 帰路⑮
「やはり、噂は本当だったのですね。」
「噂って?」
「あなたには、魔法が一切通じないということです。」
笑顔のまま答えるクレアに、敵意はないと判断した。その表情には、まったくと言って良いほど悪意がない。もちろん、ソート·ジャッジメントも反応なしだ。
「それをわかっていて、罠を仕掛けたのかな?」
「はい。失礼かと思いましたが、あなたを試させてもらいました。」
昨日までとはまるで違った、落ち着いた口調にギャップを感じる。萌えるまではいかないが。
「ひょっとして、ゴーレムを出したのはクレアか?」
「はい。」
いや···にこやかに肯定されてもな。
「詳しい事情を説明してくれないかな?」
悪意がないからといって、味方かはわからない。手の込んだ罠を仕掛けた主犯が彼女だとしたら、目的をはっきりとさせておかなければ、このまま同行されるのは厄介かもしれない。
「その前に私の事を話させてください。クレア·ベーブスと言う名は本名です。立場上は聖女と呼ばれています。」
「聖女?」
確か、慈愛に満ちた女性の事を指す言葉だ。宗教的には、神の恩寵を受けて奇跡を成したり、弱者救済の象徴とされている。
「はい。アトレイク教会では50年周期で聖女認定がされます。神の恩寵を受けたと目される女性を対象として認定式が施行され、唯一選ばれた者だけが聖女としての洗礼を受けます。」
その聖女様が俺の腹に乗っかってるのだが···教会ぐるみで美人局とかないよな?
ああ、えちえちな行為はないぞ。
勘違いするなよ。
「クレア、ちゃんとイスに座って話さないか?この体制は···落ち着かない。」
「私の温もりと交わるのはお嫌ですか?」
いやいや、その前にいろいろと問題だろ。聖女様でしょうが。あと、交わるとか言わないでくれないかな。誤解しか生まないぞ。
「嫌じゃないけど、真面目に話を聞きたい。」
「う~、残念ですけど···わかりました。」
やめて、目をうるうるさせてそういう事をいうのは。俺も誤解しちゃうよ?




