220話 王都での謀略⑰
クルドの尋問から得た事実と、国王と大公からの情報で、俺の推測がほぼ的を射ていたことがわかった。
バレック公爵はスレイヤーギルドの戦力を我が物にしようとしていた。これは騎士団を封じることのできる戦力の所持、言わばクーデターのための駒にしようとしていたという推測につながる。クーデターとは、戦闘に至らなくても戦力差による武力解除を相手に申し出ることにより、協議で成立させることもできる。これは元の世界でも実際に画策された事例もある、言わば恫喝による政権交代だ。
しかし、国家予算の再編でスレイヤーギルドの予算枠をなくし、私財による資金投入による私有化の計画については、国王と大公に事前に封じられた。アッシュや俺に個別で交渉を持ちかけて引き込もうとしたのは、スレイヤーギルド全体の取込みができなかった場合の保険としての動きだったのではないだろうか。
次に、俺を取り込むことが難しいと判断し、王城のブレインたる大公の失脚のための材料にしようとした。騎士団員の不祥事により、来賓を死に至らしめることで、ターナー卿と共に大公を辞任に追い込む計画だ。
陽動役になった騎士団員の証言によると、クルドとは面識がなく、ワルキューレとの模擬戦で魔法を使うように促したのは、士官を装った者からの手紙だったらしい。
『騎士団の恥を灌ぐために魔法でスレイヤーの注意をひき、ワルキューレに勝利をもたらせ。』という文面により、その気にさせたようだ。
こちらについても計画は失敗。
クルドという証人を残す結果となった。
毒矢による殺害方法については疑念を残すものではあるが、騎士団が使用する弓矢が使われていたことで、どちらにせよ騎士団員に容疑がかかる結果となっていただろう。
「···バレック公爵の企みは、状況証拠によればこう推測されますね。」
これまでにわかった事実や証拠を組み立てて推測を話した。
「陛下や私が危惧していたこととほぼ合致する。本人の言質を取らねば立件は難しいがな。」
大公の言葉通り、立件は難しいかもしれない。クルドの単独行動として、バレック公爵が言い逃れをする可能性は高い。地位や権威を考えると、グレイなまま有耶無耶になるだろう。
「残念だが、今後の牽制程度にしかならないだろうな。下手に自白を強要すれば、他の貴族の反発を招く。推測通りの企てがあったとしたら、それを事前に防いだということで良しとせねばならんところか。」
国王の言葉通り、ただの推測で更迭や処罰をすることは強権や独裁と捉えられる可能性がある。矛盾をしているが、絶対王政による独裁国家ではないことの弊害とも言える。民主主義の日本で限りなく黒い政治家がいたとしても、推測だけで罰することなどをすれば、政府への大きな不信感を招くことになるだろう。封建制度のこちらの社会では、他の領主である貴族達に強い反発を生む結果となり、統治が不安定となることは否めない。
言い換えれば、この国はそれだけまともな政治を行っていると言えるのだ。




