196話 謁見⑤
採寸の結果、用意された衣装に驚かされた。
シルバーのロングジャケットスリーピースにシルクシャツ。そこに艶のある黒いストールとピカピカの黒革靴···どこのとち狂ったホストだよ。
「良くお似合いですよ。」
「今年のトレンドで揃えてみました。」
2人のメイドが賞賛してくれる。
この世界では黒いスーツは執事や使用人のための衣服という認識はある。そして貴族の衣服は原色を基調とした色使いだ。
う~ん···俺の感覚ではこの世界の常識は計れないか。まぁいい。この2人のメイドを信じよう。
ようやく謁見の時間となった。
今日明日と、国王陛下と上級貴族達の定期会合が開かれているらしい。今回の招聘はそのタイミングに合わせたものだそうだ。
「待たせたようだな。」
控え室にいた俺を迎えに来たのは騎士団長であるデビット·ターナー卿だった。
「いえ。あなたに迎えに来ていただけるとは思いませんでした。」
魔族化したとは言え、彼の息子の命を奪ったのは俺だった。
「何を言っている。君がいなければマイクはもっと不名誉な死を迎えていた。私自身も同じようなものだ。このくらいのことは当然だろう。」
身内をひいきせず、自身の進退に固執しない。筋の通った御仁だった。
「ありがとうございます。」
「今回の君の招聘は大公閣下から国王陛下に進言されたことだ。詳しい内容はわからないが、名誉なことだと思う。上級貴族の方々もおられるが、胸を張って場に立つと良い。」
この人なりの激励だと受け取り、俺は改めて礼を述べた。
「それから···その格好は君の好みなのかな?」
「···いえ、王城のメイドの方達の見立てです。」
「そうか···今はそういったものが流行りなのか。」
···大丈夫か?
メイドさん達のことを本当に信じて良いのか?
本当に頼むぞ。




