178話 スレイヤーギルドの改革⑮
「盾?良いよ。」
ニーナはあっさりと盾のオーダーを引き受けてくれた。
「悪いな。忙しいんだろ?」
「タイガのパーティーが強くなるのなら喜んでやるわ。」
微笑みながらそんなことを言われたら勘違いするぞ。
「ニーナって何か変わったよね?前はオーダーを受ける前に相手の技量を確認してたのに。」
むぅ、とふくれながらパティが指摘?をした。なぜむくれる?
「そうねぇ。それは今でも変わらないけど、タイガの人を見る目は確かだと思うの。私は鍛治士よ。自分の作品の性能を最大限に引き出してくれる人になら、出し惜しみはしないわ。」
ニーナの表情には鍛治士としてのプライドが見て取れた。
「それと···パティにも新しいダガーを提供しようと思ってるのだけど、どうかしら?」
「えっ?私にも?」
「ええ。以前はまだ新人スレイヤーだったけど、表情が変わったもの。リルも誉めてたわよ。最近のパティは積極的になったって。」
「···本当?」
パティは嬉しそうに顔を綻ばせた。
ニーナは職人らしく、お世辞を言わない。特に武器を扱う者に対しては厳しい査定をする。リルの幼なじみということもあり、パティとは長年のつきあいがある。先程の言葉は、本心からの誉め言葉だと解釈をしていいものだ。
「ええ。あなたはもっと強くなるだろうから、今よりも使い勝手の良い武具を持つべきよ。」
パティが照れていた。
リルやニーナのような、ジャンルは違えども身近な実力者に評価をされるということはそれだけ嬉しいものなのだろう。
俺にはこういった経験はない。
物心がつく前から文武両道が必然な生活を送り、誰かに誉められたことなど記憶にないのだ。
『誰かに敗けることは死と同意義』
身内のその言葉を真に受け、ただ生き残るために自分を極限にまで鍛え抜いた。
自分の人生に初めて疑問を持ったのは小学校での級友との交流からだが、全寮制の今の陸上自衛隊高等工科学校、防衛大学へと進学し、世間一般の常識を周りから教えてもらった時には、自分の育った環境の異質さにショックを受けたものだ。
その後、自衛隊幹部になって普通の生活を送ろうとした俺は、1年後に3等陸尉となり、なぜか特殊作戦群という、いわゆる特殊部隊に配属をされた。そこからは各地で実戦を経験し、気がつくとエージェントとして世界中を飛び回るようになっていた。
今から思うと浮世離れをした人生だと思う。
異世界に飛ばされたことが、俺にとってこれまでの人生のやり直しをする良い起点となったのも頷けるだろう。




