162話 レイド vs上位魔族⑱
何度剣を打ち合っただろうか。
柄を握る手が痺れ、魔力が枯渇しかかっている。
時間にしてわずか5分程度の攻防。
その短い時間に、アッシュは持てる限りの力を注ぎ込んでいた。
目の前の上位魔族に変化は見られない。
やはりこちらよりも余裕があるのか?
そんなことを考えていると、急に魔族が長い間合いを取って5メートル程の高さまで飛んだ。
背中の翼を羽ばたかせて静止する。
「人間よ、名前を聞いておこうか?」
「ほう···どういう心境からだ?」
「初めて人間との闘いを面白いと感じた。だが、この続きは次に持ち越そうと思う。」
「次だと····。」
気がつくと、他の魔族は全滅したようだ。タイガ達もこちらに向かっている。
「このままだと今のような闘いを続けることは難しかろう。貴様も多くの犠牲者を出してまで、我との闘いを続けるのは本意ではないであろう?」
その通りだった。
上位魔族との闘いは互角のように見えて、全体としては圧されている。しかも、こちらに条件を合わせての闘いだ。
他のスレイヤー達に取り囲まれれば、この上位魔族がどのような手段に出るかはわからない。恐らくは上空からの攻撃、しかも魔法による無差別攻撃を行われる可能性が高いのだ。
「おまえはそれで良いのか?」
「我の目的はもともと貴様らの殲滅ではない。同胞を葬った原因を突き止めれば、あとは知ったことではない。」
「次と言うことは、また俺達の前に立ちはだかるんだろ?」
「そうだ。貴様とトリックスターと呼ばれる男を順番に相手してやろう。」
「アッシュ·フォン·ギルバート。この名前を忘れるな。」
アッシュは名乗った。
この上位魔族の戦士としてのプライドを信じたのだ。
「よかろう。我はグレイド。貴様こそこの名を忘れるではないぞ。」
上位魔族はそう言うと、急激に高度を上げて去っていった。
俺とタイガを順番にか···同時に相手をするのは厳しいと思っているのか、もしくはただの余興か。
アッシュにしてみれば、命拾いをしたという意識はなかった。どちらかと言うと、不完全燃焼に近い。
ただ、ギルマスとしては今回のレイドで大きな被害がなかったことについては喜ばしいことであった。




