最終章 You Only Live Twice 107
発射の反動はそれほどでもなかった。
しかし、そのタイミングでの吐血は瞬間的に増す。
傍から見れば、俺の口から下は鮮血で真っ赤だろう。
だが、そんなことにかまっていられる状況ではない。
一発目のベレットが竜孔流がほぼ完全といえる状態で内包され、ビルシュのゲル状の体内に侵入して核を追った。
誤算だったのは想像以上に核の反応が速かったことだ。
ほんのわすかながら弾道から回避し、ベレットは核に触れることなく体表を内側から貫いて排出することとなった。
その直後、どのような原理かは不明だが、ビルシュの体の質量が増加する。
膨張するような様相を見せてすぐに分岐し、二桁を優に超える触手が生成された。
あれがこれまでと同様のスピードで襲い来るなら、いかにルシファーの翼といえども間に合わないかもしれない。
これまでの状態から、ルシファーの翼は人の反射と同じ作用で動くと見られた。
反射とはその都度の情報を得てからの動きになる。
ルシファーの翼は熾天使が持つとされる3対6枚を超える12枚の翼を有していた。
しかし、それでは間に合わない。
反射による防御はそれほどの余裕を持った対処ではなかったのだ。
このままではすぐに対応が遅れ、俺の体はビルシュの触手に再び貫かれてしまうだろう。
そう思ったときにソート・ジャッジメントがオーバーフローを起こした。
オーバーフローといってもソート・ジャッジメントのそれは、四則演算時における記憶装置上の格納域に記録できる範囲を超えてしまう現象に近いものだ。
この状態は、きっかけは異なるが以前にも何度か経験している。
クリスいわく、脳が超越した状態。
ある事件の後、ソート・ジャッジメントが限界を超えて相手の思考を演算し、行動パターンを瞬時に推測する究極の致死装置と呼ばれた能力-Judgment calculation of thoughtが無意識に発動したのである。
これが人を超えた存在に対応するかはわからない。
しかし、俺に勝機があるとすれば、これに頼らざるを得ないというのが実情だった。
第六のアージュナーと第七のサハスラーラで核の位置の特定は常態化している。
竜孔流の充填も問題ない。
俺は再び腰だめで照準を合わせ、引き金を絞った。




