161話 レイド vs上位魔族⑰
剣撃に加えて炎撃を放つが、厚い障壁に阻まれる。
上位魔族の剣術はかなりの腕前だった。体の周囲を覆った障壁も硬い。
アッシュの剣術のレベルはタイガと遜色がない。
いや、柄の先端にあたる石突きや、剣撃の合間の足技などによる打撃を散りばめ、さらに魔法をフェイントに使う。この世界での実戦経験の豊富さはタイガとは比較ができない。
対する上位魔族は、魔法による攻撃を使わずに魔力を障壁に集中させているようだ。有利となる空からの攻撃もしない。あくまでも剣での勝負を挑むつもりなのかもしれない。
剣と剣が衝突し、火花を散らす。
この魔族の身長は2メートル程度。剣の長さも1メートルに満たない。間合いはそれほど変わらず、剣での闘いはアッシュにとってハンデのない状況と言えた。
「わざわざ不利な状況で闘ってくれているのか?」
「不利?ああ、剣での闘いのことを言ってるのか?気にすることではない。貴様の実力を存分に引き出せる状況でなければ面白くはないからな。」
なめられていると言うのとは違う。
この上位魔族は闘いを楽しんでいる。特に剣での闘いが好みなのだろう。
少し前にタイガが戦ったウェルクという魔族が似たような奴だったと聞いている。
俺と同じか。
魔族にもバトルジャンキーが存在すると思うことにした。
上位魔族は気づいていた。
他の魔族が全滅したことに。
遠巻きにこちらを見ているスレイヤー達は、目の前の男との戦闘には介入してこない。それは良い判断だと言える。もし多勢で来るのであれば、空中からの攻撃で時間をかけずに殲滅をしなければならない。
それは面白くない。
目の前の男は相当な強さだ。
やり方によってはもっと簡単に倒せるだろうが、剣での闘いだからこそ面白いと言える。
力も鋭さも剣の扱いもほぼ互角。
違うのは、自分が魔力を障壁に集中させているのに対し、相手は身体能力の強化に特化していること。
相手の剣が通っても自分には致命傷とはならないが、逆は違う。
上位魔族はそんなリスクの中で闘う相手に称賛すら送りたいと思えるほどだった。
アッシュの集中力は極限にまで高まっている。
幾度となく剣を打ち合うが、わずかに圧されているのは自分の方だ。
体の周囲に展開している障壁は、あくまで魔族の邪気を絶ちきるものでしかない。防御にはそれほどの効果はないのだ。
一撃が急所に入っただけで絶命する。
そんな薄氷を踏むかのような闘い。
だが、その状況がアッシュの気持ちを静かに高揚させていた。彼にとっては、こういった闘いこそがおもしろいのだから。




