最終章 You Only Live Twice 103
こういった戦いは近接戦らしく、戦況の見極めや戦術の選択などする余地がない。
有効なのは一瞬の閃きと備えた引き出しの数である。
引き出しというのは知識であり経験、そしてこれまでに蓄積したすべてのことだといえた。
当然、引き出しの数が多ければ多いほど、手法や手数の多さにつながる。
あとは常に冷静さを保つことが重要だ。
どのような場面であっても、このふたつがブレなければ100%に近い実力を発揮できるだろう。
あとは30%の強運と40%の努力、残りは意思の強さが状況を大きく変えると思っている。因みに、普段の努力や意思の強さを欠いては強運など引き寄せることはできない。
こういった思考は個々にパーセンテージの差異はあれど、どのような場面でも必要な要素である。
臆病さが重要でそれを30%としたある漫画の伝説的なスナイパーがいるが、あれはあのキャラクターにとっての矜恃であり間違いなどでは決してない。
臆病さや慎重さがなければ生き残ることは難しい世界である。
ただ、俺の場合はその臆病さや慎重さは準備段階で集約し、本番ではその準備と普段の努力で打ち消すようにしていた。
プロフェッショナルに限らず一流になるためには個人個人のこだわりと、機微を読む聡さが必要である。時流に乗るともいえるが、機微や時流というものはその場その時で一瞬にして形を変えるものだと認識しておかなければならない。
それができないものは時代に置いていかれ、二流やかつては一流であった者として引退か命を落とす選択に迫られる。
エージェントなどはその際たるもので、肉体的な能力、頭の柔軟性、その場その場の状況判断力が衰えると即死に至るのであった。
そして、この窮地に俺が咄嗟に選んだ打開策はこれだ。
「アイ~ン!」
そう、この恥ずかしい掛け声のアレである。
この言葉が必要かどうかはわからない。
自らも脱力系だと思えるレジェンドの代名詞だが、使う度にあまり頼らないようにしようと検証を怠っていた。
要するに、あまり積極的に使おうとは思わないが、その効果は意外なほど大きいためつい使ってしまう能力なのである。
だったら効果検証はしっかりやっておくべきなのだが、あの言葉を発しているところをできればもう誰にも見せたくはなかった。
はっきり言えば、かわいそうな子を見る目で見られるのはもういやなのである。




