最終章 You Only Live Twice 102
ほんのわずかな硬直。
それを見逃さなかった。
聖剣ライニングを突き刺して手首を返し、そのまま上方へと斬り上げる。
裂いた部分が微かに陽炎のような状態を見せたが、凝視することなく連続で斬りつけ刺し貫いた。
悪魔や魔物を斬るときとは明らかに違う感覚がする。
手ごたえがまったくないわけではないが、粘度の高いゲル状の物質を相手にしているかのようだ。
ダメージがどの程度通っているかはわからない。
しかし、陽炎のような揺らめきが大きくなり、目や口と思しき亀裂が硬直したままだった。
『奴の核を破壊しなければ、致命傷にはならぬようだ。』
聖剣ライニングの声が直接頭に響いた。
どうやら、悪魔と同じ攻略をしなければならないようだ。
「核の位置は?」
『絶えず動いておる。ただ、斬撃が加わるごとに動きは遅くなっているようだ。』
神殺しの効能が働いているのかもしれなかった。
その辺りに関しては具体的な理屈はわからない。
ただ、聖剣ライニングの誕生にはルシファーが関わっている。竜孔流と似たような作用を持つ力が、神力に影響を与えているのかもしれない。
この世の理である表裏一体。
神力と相反する力が発揮されていると思うことにした。
手近な部分を斬り払い、今や人型を維持していないビルシュの質量を削っていく。
核が絶えず動いているのであれば、その動ける範囲を狭めていくしかなかった。
非効率な力技だが、攻撃を加える度に核の動きが鈍くなるのならあながち間違いではないはずだ。
ただし、その間に奴の正気が戻り、反撃に転じられてしまう可能性はあった。
全体の質量が半分以下になった頃合だろうか、そこまではわずか数十秒しかかかっていない。
しかし、危険を勘が知らせていた。
「!?」
咄嗟に鋭角な触手が俺の鳩尾を狙ってきた。
体をそらせてかわすが、脇腹に鋭い痛みを感じる。
体勢を立て直した瞬間、次は二本の触手が襲ってきた。
片方は聖剣ライニングで逸らすが、残る一方が俺の大腿部に突き刺さる。
薬の効果が切れたのだろう。
この距離はマズイと思ったが、大腿部に突き刺さった触手のせいで間合いをとることができなかった。
さらに細い触手が三本あらわれ、まるで鎌首をもたげた毒蛇のように身構えている。
「く···。」
この距離では防ぐのは無理だろう。
俺は防御のために左手を首当たりにさりげなく上げ、聖剣ライニングを少し前にかかげて奴の攻撃を待った。
おそらく大腿部の触手を断ち斬る動作をすれば、防ぐ手だてなくやられてしまうだろう。




