最終章 You Only Live Twice 100
今の状況を考えれば、選択は一つしかなかった。
後先を考えて利口な立ち回りができるならいいのだが、この状態ではそうはいかない。
俺は羽交い締めにされて可動域が狭くなった右手を、手首と肘で適切だと思う角度に向けた。
先程のHG-01の銃弾には竜孔流をまとわせていたが、それでもビルシュの動きを止めることができなかったのだ。
そう考えると、まともに銃口を向けることのできない体勢からできることといえばこれしかない。
俺は背中にある翼を解除し、聖剣ライニングを顕現させた。
その剣身は、俺の腹を貫いてそのまま背後のビルシュへと向かう。
神殺しの剣。
それが想定通りに効果を発揮するかは賭けだった。
自らも神力を用いた翼を生やしたままでは自傷行為だと思ったのだが、それを解除したため剣の挿入口からは一滴の血も流れない。
人を傷つけず、神格だけを斬る剣。
その効果が発揮したかどうかは、俺を羽交い締めにしていたビルシュの腕の力が弱まったことでわかった。
一度、聖剣ライニングを消して拘束から逃れる。
翼のない俺は空中に静止することなく落下していく。
地表までは十メートル程度の高さだろうか。
再度翼を顕現させて体勢を立て直した。
「ぐ···ぐ···」
唸るような声を出すビルシュを見て勝機だと感じる。
すぐに再び聖剣ライニングを顕現させ、間合いを詰めて奴を両断しようとした。
「!?」
黒い両腕が伸びた。
その拳が俺を狙う。
空中で無理に旋回して奴の攻撃をかわしたかに思えたが、左手首を掴まれてしまった。
伸びた腕が急速に縮み、奴の体が引き寄せられる。
···おい、その唇を伸ばすような顔は何だ?
まだ媚薬効果は続いているのか?
クリスよ···おまえ、何かの配合をミスっただろう。あれの効能がヤバすぎて草しか生えないのだが。
近づいてくる顔···いや、唇に聖剣ライニングを一閃した。
首を両断する手前で頭部がまるごと消えたように感じる。
そう思った刹那、俺の体に伸びたゴムの様なものがまとわりついた。
こいつ···変な実でも食べたのか!?
何とか右腕だけは拘束されないように回避したが、まとわりつかれた所からまた小刻みな振動を感じた。
また···奴が腰を振っている気がする。
本当にいい加減にしてくれないものだろうか。




