最終章 You Only Live Twice 91
ビルシュは『代理の者』、そして『我々』と言った。
そのふたつについては深掘りしたいところだが、ストレートに質問したところで正しい答えが返ってくるとは限らない。
「なぜ俺をこちらの世界に連れて来た?先ほどの話だと、俺がこちらの事象に関与することは許されないとでも言いたそうだったがな。」
「君はイレギュラーだからね。本来、タイガ・シオタという人物は召喚されるべきではなかったと思っている。」
「その言い方だと、やはり意図的に召喚したのは事実のようだな。」
「そうだよ。すべては勘違いから始まった。まさかあの世界に、こちらの系譜を持つ者が実在するとは想定外だったからね。」
「こちらの系譜?」
「言葉で表現するには適切なものが見当たらないけど···神格化したものの係累とでもいえばいいのかな。それが別の世界で見つかった。同じタイミングでこちらに目当ての存在がいなかったというのが事の発端といえる。」
「その目当ての存在とはテトリアのことか?」
「まさか。彼には荷が重かった···いや、当初はそう考えてはいたのだけれど、現世に現れた彼は馬鹿が加速していた。以前はもっと素直だったのだけれどね。」
えらい言われようだが、テトリアに関しては頷く他なかった。
奴は傀儡のように生き、その後に性格を破綻させた気もする。テトリアをあの様な人間にしたのはビルシュの罪過が大きいように思えた。
「その目当ての存在とは何だ?」
「魔王とでも言うべきかな。この世に波乱や混沌を起こし、人の世に鉄槌を下す存在だよ。」
やはりそういうことか。
神が直接関与できないことは、使徒と呼ばれる者を使って行う。
それがビルシュにしてみれば魔王、そしてルシファーは執行者と言った。
悪神と善神の差というのではないだろう。
人も神も見る角度が違えば、正義も悪もひとつというわけではないのだから。
「それをおまえは乱世によって行い、ルシファーは粛清によって清めようとでもしたということか?」
特に確証などはなかった。
単にビルシュとルシファーの性質の違いからの推測だ。
「まあ、君から見たらそうなのかもしれないね。」
「先ほど我々と言ったのはそういうことか···。」
「そうだ。ただ、勘違いはしないで欲しい。ルシファーと私は敵対しているわけでも友誼を結んでいる訳でもない。」




