最終章 You Only Live Twice 83
「より多くの人の命を救うための犠牲とでも言いたいのか?」
確かに、大量殺戮兵器の投入は戦争における終焉、早期に勝敗を決するためのものだといえる。
善し悪しは別としてその効果は高い。
だが、その爪痕は時間が解決してくれるような浅いものではなかった。
「そうだ。僕が行っていることもそれと同じだとは思わないかい?」
「神アトレイクの威信を高めるためというのであれば、それはただの無差別テロだと思うがな。」
「別にそれだけを目的としているわけじゃない。人はただでさえ、日々の生活に余裕を持つと争わずにいられない生態だ。でも共通の目的があれば、その愚行も抑えられるとは思わないかい?君も前にいた世界で散々それを目の当たりにしてきたのだと思うけど。」
確かにその通りである。
しかし、だからこそ時代とともに情報戦や諜報活動に切り替わった。
「そういった大きな争いや犠牲が生じないように俺のような人間がいた。」
水面下で大きな動きに至る前に抑圧や瓦解を生じさせる。それによって第三次世界大戦は起こらなかった。
俺個人がどうのというよりも、エージェントと呼ばれる者たちの活動でそうなったと考えたいところだ。
「それは詭弁だね。」
「具体的には?」
「世界大戦というのは、数カ国が二陣営に別れて全面戦争を行うことでしょ?世界の均衡を考えて、二国の争いに他の国が直接的な武力を投入しなかっただけという考え方もあると思うけどね。」
そんなことはわかっている。
所属する組織がその片方、もしくは双方と絡むことがなければ関与することもなかった。
だが、間接関与による抑止力は働いていたともいえる。
「なぜ最初のテトリアとの戦いを止めた?」
「いきなり話を逸らすのかい?」
「いや、関係したことだ。あのとき、おまえが神アトレイクと偽って戦いを止めたのは、こちらの世界でその大戦じみたことを起こしたかったからじゃないのか?」
あのまま戦いが続いていれば、勝利したのはテトリアの方だったと感じていた。
結果がそうなっていた場合、少なくとも現時点での動きは変わっていたはずだ。
「あのまま君が負けていれば、対外的には大した情報もなく悪漢テトリア、もしくはそれに憑依された大戦犯タイガ・シオタが生まれていただろうね。でも、それだと困るんだよ。もっと明確な立場で人類の大きな脅威を生み出す必要があった。」




