156話 レイド vs上位魔族⑫
なんだ?
あんな魔法は見たことがないぞ。
炎柱が青くなり、強烈な温度で標的となった魔族を障壁ごと消し炭にした。
上位魔族はこれまでに体験をしたことがない事象に意識を奪われていた。
ここにいるスレイヤー達は人間のレベルで考えるとかなり強い部類に入る。そして、後から来た者達は先程の投石と言い、今の青い炎柱と言い、闘い方が奇抜そのものである。
目の前のスレイヤーが言っていたトリックスターとは、ただ相手の虚をつき、闘いを有利にするという意味ではなかったのか。あれは新種の魔法や戦法のオンパレードではないか。
「驚いたか?」
視線を正面のスレイヤーに戻す。
なぜか自慢げにニヤニヤと笑う顔がうっとうしい。
「あの魔法もトリックスターと呼ばれている奴の仕業か?」
「あ~、トリックスターっていうのは俺がさっき勝手につけた二つ名だ。それと、あんな魔法は俺も初めて見た。」
「·····あそこにいるのは、普段から何をしでかすかわからない人間と言うことか?」
「ハハッ。その通りだ。でもまともに闘っても相当強いぞ。」
「····我の同朋を葬ったのは奴か?」
「だったらどうするんだ?」
「知れたことよ。この場で消してくれるわ。」
アッシュの目に強い光が宿った。
「じゃあ、まずは俺を倒してからじゃないとな。あいつは俺よりも強いぞ。」
闘気とでも言うべきか。
殺気とは異なる強いオーラが膨れ上がる。
「むぅ···。」
先程までとは別人のような雰囲気を醸し出す人間。周りの仲間を巻き込まないように力をセーブしていたか。
上位魔族はここに来たのは正解だったと感じた。
下級魔族の尻拭いにわざわざ出張ってきたという意識があったが、あのトリックスターと言い、目の前の人間と言い、予想外の存在に出会うことができた。
「おもしろいな。まさか人間ごときにこんな愉快な気分にさせられるとは思わなかったぞ。」
「それは何よりだ。」
「本気で行く。すぐに死ぬなよ。」
上位魔族の邪気が増幅した。
これまで以上の強者の気配に、アッシュは恐れではなく、歓喜の気持ちを感じる。
「良いねぇ。このピリピリした感覚。久しぶりに楽しい闘いになりそうだ。」
バトルジャンキーが恍惚とした笑みを浮かべた。




