最終章 You Only Live Twice 49
結局、そのままでいることにした。
相手が人間なら欺く必要はあるだろう。
しかし、今回は黒い翼を持つ天使···か何かだ。空を飛んでいるのだからコスプレというわけではない。
どう見ても人外なのだから、昏睡状態に陥ったところでリスクが増すだけだと思えた。
とりあえず、相手の正体を把握しなければ対処のしようがない。
「この結界は、外部から隔絶するためのものだと思うか?」
誰ともなしに聞いてみる。
「詳細はわからないけど···たぶんそうだと思うわ。他に何か影響が出ている感じはしないから。」
フェリがいち早く答えてくれた。
「フェリの言う通りだと思う。周囲から結界内のことを視認させないためのものだろう。外との境界が歪んで見えるから、何らかの障壁だと考えるべきだ。」
ファフも御者台から補足してくれる。
「だったら、目的は俺だろうな。」
そう言って箱馬車の扉を開け、外に降り立った。
「「タイガ!?」」
フェリとパティが同時に叫んだ。
二人には手振りで大丈夫だと伝えておく。心配してくれるのはありがたいが、ここは姿を現しておかなければややこしいことになりそうな気がしたのだ。
上空を見上げると、予想よりも近い位置に三体がいた。
表情まで読み取るにはまだ距離があったが、なぜか三体とも笑っているのがわかった。不敵な笑いではなく、どちらかというと微笑んでいる気がする。
ただ、男性型に関してはもともと厳つい顔なのか、微笑んでいるつもりが少し仁王像を彷彿させた。
殺気、敵意などは感じられない。
まるで旧知の存在に再会したかのような和やかさを感じてしまった。
「タイガっ!?」
アッシュが俺に声をかけてくるが手で制した。
なぜだかわからないが、対話をすべきだと思ったのだ。
ゆっくりと足を進める。
数歩進んだ頃合に、なぜか足もとが心もとない気がした。
「お、おい···。」
「タイガ···それ?」
近くまで来ていたアッシュとサキナが驚きに目を見開いていた。
ん?
視線の先は俺の背後にある。
「は、なんじゃこりゃ!?」
見慣れないものが俺の背中にあった。
漆黒の羽が両翼を広げるように展開している。
まるで正面にいる三体と同じだった。
俺の頭の中でニヤリと笑うルシファーが浮かび、何かをつぶやく。
『翼を授ける。』
···いや、おまえはオーストリアのエナドリか!?
因みに、「翼を授ける」が虚偽広告だとして集団訴訟を起こされ、何度も和解金を支払っているのは記憶に新しい。
そうか、俺には翼が生えたか。
いや、違う。
そうじゃない。




