最終章 You Only Live Twice 45
それからさらに一日が経過した。
二度の不審な動きからは特に何事もなく進むことができたのだが、このまま平穏で済むはずがない。
地図を広げて待ち伏せに使えそうな地形を探してみる。
「基本的に険しい場所や死角の多い所を通過するわけじゃないからな。警戒すべき場所をしぼるのは少しきついんじゃないか?」
アッシュがそう言った。
これまではもう一台の馬車に乗っていたのだが、今後のための打ち合わせでこちらに移ってきたのだ。
「そうだな···峡谷などを通ることもないし、強いて言うならこの辺りの橋が落とされたら厄介そうだ。」
「ああ、確かにな。そこを落とされたら馬車では渡れない。それに多勢で囲まれると地上では袋小路だな。」
橋の手前は街道の両脇に高低差が生まれている。
片側が岩場でもう片方は川だ。
「転移や飛行で逃げるとは考えないか?」
「それをどこまで使えるか、相手が知っているかどうかだな。」
ビルシュなら加護を受けた者の能力を漠然とでも把握しているだろう。
なにせ、berserkrがどうとか言っていたくらいだからな。
しかしそう考えると、あたりをつけた場所で襲撃にあうと仮定した場合、相手はピルシュではないのかもしれない。
テトリアに計画的な行動は難しく、ビルシュに判断を仰いでいるとするとこのような稚拙な計画は実行しないと思えた。
そうなるとやはり別の線が浮上するが、具体的な仮想敵が思い浮かばない。
ビルシュやテトリア以外だとすると王国側か魔族、悪魔絡みだと思えるがそちらも違う気がする。
「ルートを変更すべきかもな···。」
橋が落とされた場合、かなり厄介な状況になる気がした。
「何かわかったのか?」
「具体的なことは何も言えないが、未知の敵である可能性がある。どこと通じているかもわからない。」
「勘というやつか?」
「どちらかといえばそうだな。使い魔を用いたり、計画が杜撰なところを考えるとそういう気がする。」
「わかった。ルートを変えよう。」
アッシュの決断は早かった。
「いいのかそれで?」
「どちらにしても、橋を落とされていたらルートは変更になる。しかもそれに気づいてからでは迂回するにも相当なものだ。それにタイガが言うように、俺も未知の敵だという気がするからな。」
アッシュは普段は魔族を相手取るスレイヤーだが、脅威となるのは相手との実力差ばかりでないことを知っている。
手のうちがわからない相手は人間であっても厄介だと経験上理解しているのだ。




