最終章 You Only Live Twice 29
テトリアが多くの人々に認識されるよう動くには、それとわかるような肉体が必要である。
だからこそ鎧を奪ったのではないだろうか。
しかし、鎧だけでは中身はわからない。
そう考えると、何かの方法でテトリアの肉体を確保しようとしているのかもしれない。
ビルシュの肉体を使ってというのはないだろう。
格や持っている素養が違いすぎるのだ。
だからこそ奴はずっと俺の体を狙っていた。
そこまで考えた末、俺が奴らならどう動くのかという点について考える。
狙いが神アトレイクへの信仰を強めるためのものだとしたら、絶対的な敵が必要だ。
これまではそれが邪神シュテインと、奴の手先となったテトリアだった。
それが覆るかどうかに関しては何とも言えない。
こういったものは、世論と同じで不特定多数の者がどう感じるかである。
先の叙爵式での一件で、参加していた王族や貴族を通じてテトリアの反逆ともいうべき行いは広まっていた。
しかし神の信仰という面で考えると、その多くは民から寄せられものである。
数で考えても貴族より庶民の方が圧倒的に多いのだ。
まさか身分によって個々の信仰の大きさが変わるということはないだろう。
多くの命を絶やす行為は南の小国で実行されている。それを邪神シュテインの蛮行として広めることはまだ不完全であった。
ならばどうするか?
邪神シュテインとテトリアに変わる仮想敵の擁立。
その対象は···もしかして俺ではないだろうか。
ビルシュの命を奪ったのが俺だとされれば、テトリアとの関連性を聞いている者たちはどう捉えるか。
ただ、それを吹聴する方法はどうする?
何かの結論が出たわけではない。
しかし何となくだが嫌な予感がした。
その予感が的中したと知ったのはそれから数日後のことである。
ルシファーと邂逅した遺跡がある国で、衆目の前に生きたビルシュが現れたのだ。
そいつは国王と並んで演説を行った。
南の小国の状況を話した後にその凶行を行った者、そして自らの命を奪おうとしたのが同じ人物であると。
そして、それが邪神シュテインの手先であることが判明したことも合わせて発表された。
絶命の危機にさらされたビルシュがどのようにして助かったかについては「神アトレイク様の御力だ」とされている。
どれだけ強行策を取るのかと考えたが、こういったものは世間がどう思うかで状況が変わるものである。




