153話 レイド vs上位魔族⑨
「生きて帰れないだと?」
アッシュが聞き返すが、その顔には笑みが浮かんでいた。
「何を笑っている?気でも触れたか?」
「いや···こんなに早く来れる訳がない援軍が、なぜかそこまで来ているからじゃないか?」
アッシュの目には魔族のはるか向こうからやってくる見覚えのある者達の姿が写っていた。
どんなマジックを使ったんだ?
どう急いでも、あと1~2時間はかかるところだろう。相変わらずやることが非常識だ。
「何人来ようが状況は変わらんぞ。」
「そうかな?こちらに向かっているのはうちのギルドイチオシのトリックスターだぞ。」
「トリックスター?」
「見ればわかるさ。」
そんな会話をしていると、馬上のタイガらしき人物が何かをこちらに投げてきた。大きさからすると石のようだが、投げて届くような距離ではない。
失速して落ちるだろうと思っていると、逆にぐんぐんと加速し、アッシュ達の頭上を越えていく。
「何だ、あれは?」
魔族は1キロ近く後方から飛んできた石の軌道を見守っていた。
アッシュは魔力を読んだ。
投石に風属性魔法をかけているのか。そんな使い方があるとはな。
アッシュが考えたようにタイガは投石にケイガンの風属性魔法をかけさせていた。攻撃や障壁に魔法を用いることは当然だが、物理攻撃に合わせることはほとんどない。
魔法が存在しない世界から来たタイガ独自の発想だと言えた。
石はそのスピードをさらに加速させ、山の方から飛んできた魔族を襲う。
直線的な石の軌道を読み、標的となった魔族は難なくそれを避けた···が、急に軌道を湾曲させた石は魔族の顔面に直撃した。
「何っ!?」
驚いたのは魔族もスレイヤーも同じだった。1キロ離れた距離からの遠投に加え、途中で軌道を変えさせて魔族にダメージを与えた投石。
冷静に考えれば魔法を使えば不可能なことではない。しかし、この世界では魔法の代わりにそんな攻撃をする者自体が存在しない。
まさしくトリックスター。
上位魔族はアッシュの前述の言葉に納得してしまうのであった。




