最終章 You Only Live Twice 14
「その能力が別の存在が入り込んだのを記録していた
ということでいいのか?」
説明したりないといった感じで拗ねたような顔をするクリスを無視して続けた。
「そうだ。左脳は言語系の記憶を司ると説明したが、そこに理解できない言語が含まれていることにある時気づいた。不可思議に思い、様々な言語を調べてみたがついにみつけることは叶わなかったのだ。とはいっても、それは前世での話だがね。」
「こちらに転生してからそれをみつけたと?」
「そうだ。その言語は一般的なものではなかった。探すのに苦労したのだが、何年もかけて神語であることを突き止めたのだよ。」
「神語?」
「古代、この世界では神を実際に目の当たりにすることがあったそうだよ。そのときに用いられたのが神語へルビーだった。そして、その神語の中に解読できないいくつかの言語が存在する。そしてよく出てきた解読不明な言語のひとつが固有名詞であることはすぐに把握できた。」
「その固有名詞とは?」
「アザゼルだ。」
ルシファーがクリスの思考に入り込んだとして、自身の名をわざわざ連呼しないだろう。
「···アザゼルって、あのアザゼルか?」
「おそらくそうだろう。」
アザゼルとは、ルシファーと同じく神界を追放された堕天使といわれている。
ただ、ルシファーの言葉で『天使というのは逸話で語られているだけ』というのがあった。アザゼルも同じだとしたら、ルシファーと同じく神だったという可能性も出てくる。
「ここでまた新たな神が登場するとはややこしいな。」
「それについてだが、私はアザゼルは今は存在していないと考えている。」
「根拠は?」
「元の世界では様々な神話や逸話で出てくる名前だが、こちらでは堕天使や悪魔ではなく、かつて存在した神であり、下界における精霊王の名前と一致した。」
「精霊王···。」
「数千年以上、いやもっと以前の話かもしれない。精霊王アザゼルは、人間の女性と交わり子を残したそうだ。そして、その子はやがて父であるアザゼルを滅ぼした。」
「精霊王ということは、エルフのような容姿をしていたりはしないよな?」
「そういう記述もあった。そして、それが子の容姿にも受け継がれているそうだ。」
「性別は?」
「男性だ。」
数千年を生きる古代エルフ。
ビルシュはそのアザゼルの子ではないだろうか。




