最終章 You Only Live Twice 2
『その考えは概ね正しい。厳密にはミカエルとルシファーだがな。』
ミカエルとルシファーは前世の神話では共に大天使だ。
このふたつの存在はキリスト教では双子といわれ、兄ルシファーは大全天使長、弟ミカエルは四大天使の長とされている。
ともに天使を統べる大天使であり、後にルシファーが神界に反旗をひるがえし、ミカエルがそれを討ったというのは西洋文学では有名な話だ。
『おまえがいた世界では様々な神話で語られていた。私はミカエルに討たれて堕天使となったなどな。』
「それは真実なのか?」
『神の世界は人の常識では計り知れない。そういった逸話は人の想像や願い、道楽として語られているものだ。実際にはミカエルも私も天使ではなく神として存在した。ただ、先ほどもいったように、表裏一体というのが理なのは神界においても同じなのだ。』
「人の言うところの善悪に分けられたということか?」
『善神や悪神というものは人の思考でしかない。神はそれぞれに役割を持つ。ミカエルは俗世の人々に聖別の天使といわれ、多くの者が傾倒した。逆に私は悪魔などと呼ばれ、邪悪な心を持つ者の崇拝対象となったのだ。』
「実際にはそうでなかったというのか?」
『私が神界に反旗をひるがえしたのは事実だ。人という生のある存在を駒替わりに遊戯にふける神どもがいたのでな。その辺りは知る必要もないだろう。』
今の話が事実だとすると、これまで見聞きした内容とは相反することが多い。ただ、似たような話が語り継がれているのも事実だった。
人の常識では計れないが、特に弁解する気もなさそうなところに真実味があるのかもしれない。
『神の権威というものは信仰により決まる。それは神界だけでなく、下界も含めた生なるものすべての想いなのだ。その中でも知恵や意思の階位が高い人間の信仰というものは、大きな役割を果たす。』
つまり、人の世でいう選挙と同じということだな。
有権者であり、その投票により与野党の勢力図が決まるということだ。
なるほど、以前に神界の仕組みが政治の世界に似ていると感じたことから連想すればわかりやすい。
「もしかして、ミカエルはその信仰の大きさで神界のトップになったのか?」
『そうだな。私が堕天したことによりそうなった。そこでアストライアーの呼び名を別の音韻に変えてアトレイクを名乗ったのだ。』
今の話に矛盾点は見いだせなかった。
これがシュティンの巧みな意識操作だという疑いがなくなることはないが、以前に聞いた内容との辻褄があってしまうのだ。
そして、なぜそのアトレイクが堕天することになったかに、事の真偽が隠されている気がした。




