215: 実は関連のあった三人⑤ ~余計なこと言わないようにしよう!~
コミック④巻が発売されました!
ボクの目の前の人、あやしい人かと思ったらAランクの冒険者だったよ。
ギルドカードの名前もしっかり見たし、これで安心だね。
だって悪いことした人は、冒険者ギルドに登録できないことになっているんだ。
さっき王都に連れていかれたブー何とかって貴族の人は悪いことをしたから(しかも続けて!)、さすがに冒険者の資格がはく奪されたって聞いたもんね。
だからって、目の前のカイト・……なんとかさんって人を完全に信用しちゃいけないけど、近くにはシャーロットさんがいるもん。
シャーロットさん、ボクたちを守るためなのかな? クッキーやお茶にまったく手を付けないで優しく見守ってくれているんだ。
なんだか申し訳ないよ。
こんなにおいしいクッキーなのに……って、ボク三枚めに手を付けていたよ!
だって三枚とも違う味なんだもん。
デブになっちゃう……ううん、クッキー自体小さいから大丈夫!
おいしいクッキーをいただいたし、すごく重要な調査のことでボクたちの話を聞きたいみたいだし、教えていいよね。
「えっと、あの日――ボクたちが実習していた日に、漬物屋さんの馬車が立ち止まってたのを発見して、魔物も寄ってきたんで戦ったっす」
あれ、何だか視線を感じるよ。
右と左――ワーシィとシグナから見られているよ。
「あのことは言っちゃあかん」「うまく話すのよ」って言いたそうにしているよ。
うん、ボクが一番恥ずかしいから、言わないもん。
「実習? 三人以外にも目撃者がいるのか?」
「いないっす。各自パーティーごと別れて、ノーヴェの森で一晩過ごす現地実習だったっす」
「ああ、そのあいだ採取や魔物を討伐するっていう、学園生が夏期修業前にやる実習か」
「よく知ってるっすね」
「学園のイベントは有名なものが多いからな。それくらい知っている」
そっかぁ。確かに学園のイベントを知っている人、多いもんね。
夏期の修業だって有名だもん。
今まさにボクたちがアーリズに来て依頼を受ける生活をしているけど――町の人たちによく「がんばってね」って声をかけてもらえるくらい知られているよ。
「『ノーヴェの森』は学園都市の南に位置する南北に長い森だな。――それで、具体的にはどこで会った?」
向かいのおじさ……カイトさんが腰のあたりから地図を出したよ。
大容量収納鞄を持っていたんだね。
大容量収納鞄は結構高いし、紅茶にクッキーも高級品……結構稼いでいる人なんだなぁ。
「えっと、――ここっす」
ボクはノーヴェの森の南にある道を指したよ。
その道は森の南端に沿う細い道で、小さな馬車なら通れるくらいの道幅だよ。
それからさらに南にも森が広がっているから、人もあまり通ることはないよ。
細い道の両側が森だなんて、薄暗くて見通しがよくないし、魔物が出てきたとき戦いにくいもんね。
「――へぇ、だが……学園の実習にしてはずいぶん離れた場所まで進んだな? 確か実習は学園都市南門からスタートして、そこから散開するだろ。実習時間内でわざわざ南端まで行くか?」
「え……」
ノーヴェの森は学園の低学年でも気軽に入れるくらいの森だよ。アーリズ南のビギヌーの森よりずっと初心者に優しい森なんだ。
でもその森の南、道を挟んでさらに南に広がる森は、低級の魔物も出ることがあるから注意だよ。
実習では、森の北半分までの範囲で作業するほうが望ましいって言われていたくらいなんだ。
夏期の修業前に危ないことをしないほうがいいし、遠くまで行っても疲れちゃうからだよ。
だって実習のあとは、旅立ちの準備や買い出しで忙しくなるもんね。
「森で一泊野宿するなら普通は学園に近い北側か、それでも西や東で行動すると聞く。あえて南まで行かないだろ。間違えてないか?」
「えーと、う~んと……間違えてないっす」
カイトさんが不思議がるのはよくわかるよ。
ボクたちだって「無難に北側で、着実に作業しようね」って決めていたんだから。
あ、カイトさんがじーっとボクを睨んでいるよ。怖いよ!
だからボクは助けを求めて右を見たよ。
でも……ワーシィにそっぽ向かれちゃった。紅茶を飲み干したよ!
左も見たよ。
シグナもボクから顔を背けてクッキーを食べているよ。その味、ボクまだ食べてないよ!
「……嘘はやめろ。素直に教えてくれればすぐ済むと言っているんだが? 学園から森の南端までは日中走り続けないと着かない距離だ。一泊二日の実習でそんなことする馬鹿がいるか。学園に確認……」
「ギャー! 嘘じゃないっす! 確認はやめてほしいっす!」
だってボクたち、ノーヴェの森の南まで行ったことを内緒にしているんだもん!
先生に怒られちゃうかも! ううん、呆れられちゃうかも!?
「ノーヴェの森の中央に、小型の馬車が通れる抜け道でもあるんじゃないのか? さっさと言え。この案件は子供が考えているよりずっと重……」
「むむー! さっきボクが言った場所で合ってるっす。本当っす、ボク南に走ったっす! 昼から夕方まで走ったらしいっす!」
「……はあぁ?」
おじさんはすっとんきょうな声出してるけど、本当だもん。
「あのー、ほんまです。正直、実習で失敗するかと思いました」
「あの日、本当に焦ったわよね……」
さすがにワーシィとシグナも付け加えてくれたよ。
だからボクも、恥ずかしかったけど……大きな声で正直に話すことにしたんだ。
「ボク……よく覚えてないけど、――変なキノコ食べちゃって、そのあとずーっと南に走ったっす!! その先の道で漬物屋さんたちに会ったっすよ!」
おじ……カイトさんとシャーロットさんが、不思議そうな顔でボクを見たよ。
だからボクは、渋々あの実習の日の出来事を話したんだ――。
シャーロット「『転生した受付嬢のギルド日誌』④巻が発売されました!」
コト「ボクたちが!」
ワーシィ「どどーーんと!」
シグナ「登場します!」
カイト「帯に書いてある「ポンコツ三人娘」。的を得たすばらしい紹介文が目印だ」
シャーロット「……私と『キラキラ・ストロゥベル・リボン』の三人が一緒の表紙ですよー!」
皆様、応援してくださり、誠にありがとうございます!
おかげさまでコミック4巻が発売されました。
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