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ツンデレ美少女のデレが強すぎる

今回は会話多めです

「それは……どういう意味での付き合うなんだ?」

大げさに首を傾げてとぼけた振りをする。

完全に意味のない行為だと言うのは承知の上だ。


既に答えは分かってると言うのに、それでも俺は念を押す。

間に合う内に何らかの形で訂正を行ってくれることを期待して。

口が滑ったでも、言い間違えたでもいい。

今ならまだ何もなかった事に出来るんだから。


「勿論恋愛的な意味よ。他に何があると言うの?」


希望は一瞬で消え失せた。


きょとんとした様子で聞き返してくる梅森。

いや何私おかしなこと言いました?みたいな顔してるんだお前は。


おかしなことってか……そう、まずタイミングがおかしいんだ。

脈絡どころか砂粒程度のムードも情緒もありはしない。

連れのトイレを待っている間に突然付き合ってみたいと思う?って……


これが告白なのかは分からないが…OKにせよ断るにせよ俺の方としても迂闊に答えられないだろ。

心を読めたりしなければ発言の意図を探る他あるまい。



他にも色々言いたいことはあるが置いておこう。

現時点で一番の問題は梅森の問いにどう答えるか。


慎重に空気を読みながら会話を行う。

一つ失言を犯すだけでも取り返しのつかないことになるのは既に見え透いているんだ。


「……もし付き合ってみたいです!とか言ったらどうすんだよ」

まずは最も気になる点を消極的な姿勢で聞いてみる。

本気で言ってるのか……いや内心で本気なのは俺からしたら分かり切ってることなんだが。


結局は梅森が表でどういうスタンスを取るかだ。

息を飲んで返答を待つ。


「その場合は……今日から宜しくお願いしますってなるわね」


この一言を皮切りに話の方向がきっぱりと定まった。


マズい。梅森はクールなキャラの方で正式に一線を越えようとしている。

とにかく話を停滞させなければ……!

両手を挙げて落ち着けと促す。


「あれか?ドッキリ的な奴だろ?」

「ついでに如月さんとの結婚騒動の誤解もすぐに解けて一石二鳥よ」


清々しいレベルの無視だ。

ついでって、家電量販店の様なお得感を出してくるな。

誤解はどうにかしたいが…だからと言ってそう簡単に納得できない。

恋愛は、そんな目先の利の為に行うものじゃないだろう。


「外暑かったからな。熱気のせいで少し混乱してんじゃないか?水でも買ってくるよ」

「心配ないわ。今の私はすこぶる冷静だから」

立とうとする俺の腕を梅森はぎゅっと掴んで引き止める。

その行動から逃がさない。という確固たる意志を感じた。


……いや、冷静は嘘だろ。

確かに一見梅森の姿勢は整っているように見えるがこっちは分かってるんだ。


(あ!ててて手繋いじゃった……あれ?私何言ってたっけ?ていうか何でこうなったんだっけ?)


このように内心じゃ欠片も冷静さは残っていない。

意味不明な行動に驚いているのはあいつ自身も同じなんだ。

だが悪くない兆候でもある。

もし自分の暴走具合に気付いてくれているなら、冷静になってくれているなら。

一歩下がるのはまだ遅くない筈だ。


当然俺は何も聞かなかった事にするから……だから頼む!


(いや……もうここまで来たら行く所まで行かなきゃ!)



無慈悲な宣言が降りかかる。


嘆く暇すら無く梅森はすぐに眼前まで迫って来た。


慌てて顔を逸らそうとするも間に合わず、耳元でそっと囁かれる。



「私は絶対に裏切らないから。信じていいのよ」





絶対に。信じていい。少し前までの俺にとっては全く信用に値しない言葉。

どれだけ綺麗言を並べても裏じゃ何を考えているのか分からない。

実際に裏切られた人間なんだ。嫌って言うほど教訓として頭に染みついている。


でも今は違う。

分かるんだ、人の本音が。


梅森の言葉が嘘偽りない純粋な気持ちだと言うのが。



ひたすらに疑いようのない事実は、俺の心を強く揺らすのだった。


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