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第10話


 翌日、Re:connectについての企画会議が行われ、あたしと高橋先輩が参加した。


「明日メンバーのシチュエーションボイス発売されるんですけど」

(……シチュエーションボイス?)

「あ、そうだ。ふじっちに言ってなかった!」


 高橋先輩に山のような資料を渡される。


「歌い手グループだけど、各々がグッズ販売してるらしくて」

「はぁ」

「で、今回のが、白龍月子と、黒糖ミツカと、水城スイがシチュエーションボイス」

「はぁ」

「紫ゆかりと、翠葉エメがぬいぐるみ販売」

「ほぉ」

「で、今週、白龍月子と、黒糖ミツカが個人チャンネルでMVを出す」

「なるほど」

「で、Re:connectアカウントで、歌ってみた動画も今週中に出す」

「はいはい」

「だからタイミングに合わせて編集した動画も出して行きたくて」

「なるほど」

「併せて、切り抜き動画も……」


 つまり、何が起きたか。黒糖ミツカのMVは平均的な数字を取ったので、そのまま様子を見ることになった。ここまでは予想通り。問題は白龍月子。


 バズった。


(ちょちょちょちょ待て待て待て待て!!)


 そのアニメーションMVは日本だけではなく、海外まで拡散され、再生数は1週間で1億回再生された。


(嘘嘘嘘嘘嘘!!)


 どんなMVかというと、もうなんともくだらない内容の歌なのだ。白龍月子が女性を口説きまくるが絶対に上手くいかないため、色んな手段でとにかく女性を口説きまくるが結局失敗に終わるという、情けない内容の歌。ただ、変態的な歌詞、中毒性のあるリズムやテンポが耳に残ったのか、ショート動画アプリでは有名なインフルエンサー、そうでないインフルエンサーの踊ってみた、歌ってみた投稿の嵐。さらには全く違う内容の動画のBGMとして使用され、とにかくショート動画を見るだけで白龍月子の歌を聴いてしまうシステムが出来上がってしまったわけだ。

 あたしは提案した。


「このままでは、ミツカさんが可哀想です! もっとミツカさんを推してあげるべきです!! 広告を回しましょう! ミツカさんの歌も、可愛くて中毒性があります!」

「お前馬鹿か! ここで白龍を推さずにどうするんだ!!」

「でも、だって、先輩……! そんなことしたらチャンネル登録者数が……」


 白龍月子、チャンネル登録者数、31万人。


「同棲の話が……」


 白龍月子、チャンネル登録者数、36万人。


「ミツカさんが可哀想じゃねぇですか!! こういうところからチームに亀裂が入ったりしやがるんですよ!!」

「大変です! ミツカさんのシチュエーションボイスの売れ行きがすごいです!!」

「よしきた!! 広告回せーーー!!」

「お願い! ミツカさん!! 白龍さんに勝って!!!!」


 白龍月子、チャンネル登録者数、44万人。

 黒糖ミツカ、チャンネル登録者数、27万人。


「これがYoutubeとTikTokドリームだ! 見たか! ふじっち! この光景を忘れるんじゃねえぞ!」

「止まって!! お願いーーーー!」


 その日の晩、白龍月子の配信タイトルはこうであった。

【チャンネル登録者数50万人耐久】


『いやー、皆さん、本当に沢山歌ってくださり、ありがとうございます』


 >最初聞いた時感動した

 >何回もリピートしてるw

 >男同士で歌ったら絶対盛り上がるやつwww


『いや、もうね、ぜひカラオケで歌ってください。なんかすごいバズりましたね。でもね、みんな、あれ一年前からある曲なんですよ。知ってた?』


 >え!?

 >調べたら一年前って書いてあってびっくりした

 >MVの凄さを思い知った一曲だった


『そうなんですよ。ちょっとウケ狙いで作ったおまけ程度の歌だったんですけど、あれさ、内容結構面白いじゃん? 俺絶対これバズると思って、結構な金額はたいてMVお願いしたんですよ。いやー、依頼してよかったー!』


 >50万人まであともうちょっと!

 >おい、信じられるか……? 1ヶ月前までは20万人だったんだぞ……?


『じゃあ行くまでアイドルっぽく歌いながらやっていきましょうかね。えー、初見の皆様もどうぞ、チャンネル登録よろしくお願いしますー』


 そこからものの一時間で50万人を突破。


『え、50万人いった!? うわ、やったー! 6年かけてようやくだよ! やったね! じゃあ最後にバズった、あの曲歌って終わりにしましょうか!』


 佐藤さんから連絡が来た。高橋先輩が着信を受け取る。


「もしもしぃー」

『あ、高橋さん、白龍が50万人いきまして!』

「いやー見てましたよ! 本当にすごいですよ! おめでとうございます!」


 高橋先輩が誰もいない廊下へ出ていった。

 残業中の編集者が各々仕事をしている。

 白龍月子の配信が終わった。


 あたしはパソコンを閉じ、深い息を吐いた。


(……さて、帰ろう……)


 その時——LINEに通知が届いた。


(ん? クライアントかな?)


 LINEを開いてみたら——白龍と出ていて——あたしは固唾を飲んだ。メッセージを見る。





 >同棲、確定。






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