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ケーゴ総司令

 安全の確保ができた俺たちは、今後の方針について話すため、ドワーフやエルフたちにも声をかけて入り口ホールに集まった。


 研究バカのクリムマギカの住人たちも、さすがに敵の群れが街の前に集結しているとあって、自分の研究を優先させずに入り口ホールに集まってきている。


 と、

 集団から魔術本部長のフーディニアスと技術フェローのディグドが二人して俺たちのほうに進み出て来た。


 やべえ。


 いろいろ勝手してるから怒られるかもしれない。

 橋落としちゃったし。


「ケーゴよ、我々はこれからどうしたらよい?」ディグドが訊ねてきた。

 

 第一声、それ?

 俺に聞くんすか?


「我々は戦いについてはからっきしだ。作戦を立案してくれると助かる。」フーディニアスも何故か俺に言う。

「ええと、それだったら王国騎士でもあるエデルガルナさんに聞いたほうが良いのでは?」

「嬢ちゃんか・・・。」ディグドの言い方がなんか嫌そうに聞こえる。

「私は王国の騎士殿でも構わないが。」フーディニアスが言った。

「いやぁ、ルナちゃんはなぁ。」ディグドが渋る。


 なんか、ルナに対するディグドの対応おかしくね?

 ディグドの後ろにいるドワーフたちもなんとなくルナが隊長になるのには不服そうだ。


「ねえ、ルナとディグドさん、何かあったの?」こっそりリコに耳打ちして訊ねる。

「ルナちゃん、ケーゴがゴーレム作ってる時に『お酒の席は仕事にも大事』とか言い出して、暇だったドワーフさんたちとお酒を飲んだの。」


 いつの時代のノリだよ。

 てか、こっちもそういうしがらみ飲み会あるのかよ。


「あれ? でも、ルナってお酒飲めなくなかった?」

「何か、そういうの研究してるドワーフさんにお酒で寝ちゃわないお薬作ってもらったみたい。でも、ルナちゃん、寝ないと、ものすごく酒癖悪いの。」


 なんとも、ろくでもない話だった。


「私はケーゴに全権を委任するのがよいと思うが、どうじゃ?」ディグドが提案する。

 ドワーフたちが期待の眼差しで俺のことを見た。

「貴殿がそう言うなら反論はない。」提案されたフーディニアスがこっちを見た。

 エルフたちもフーディニアスに合わせるようにこっちを向いた。

「ケーゴよ、仕様をくれ。」フーディニアスが言う。


 勘弁してくれ。

 お前ら偉い人の仕事してくれよ。

 あと、仕様じゃねえし。


「ぶっちゃけ、ワシらじゃ戦い方の戦術なぞ立てられん。そこは専門家に任せる。」


 そうかぁ・・・。

 クリムマギカだと俺でも戦いの専門家って扱いになるのか・・・。

 俺、デビュー1ヶ月くらいのルーキーなんだけど。

 戦術の作戦なんてとても立てられない・・・こともないか。

 イベントのクリア条件は知ってるわけだし。

 でも、ゲームの知識で本当の戦いを指揮しちゃって良いのだろうか?


 ・・・みんながイベントクリアに協力してくれる、と考えるか。

 少なくとも、今ここでこのイベントに一番詳しいのは俺だ。


「解りました。」

 俺はそう答えて、リコとヤミンを振り返る。

 二人は小さく、しかし、力強く頷いてくれた。

 心強い。


「それでは、私の作戦を言います。ロックジャイアントは強いので直接戦うのは止めましょう。崖があるので向うは攻めて来れません。相手はせずにメルローさんが作っている魔法装置ができたらそれで吹き飛ばすのが良いと思います。」

 俺はルスリー王女から伝え聞いていたイベントのクリア作戦をそのまま伝えた。


「大丈夫かのう?」

「あの大群を吹き飛ばせそうか? メルロー。」

 ドワーフたちが心配そうに声を上げた。

「うーん。」

 さすがのメルローも無責任に任せてよとは言えず困ったように俺を見上げた。

「それに賭けるしかありません。王女殿下も神託で神様からそうすべきだと聞いています。だから、成功するはずです。」

 

 と言ってはみたものの、イベントはアルファンの時のとおりに進んでくれるのだろうか。

 すでに敵が違うんだが。


「神託が出ているのなら安心だな。」

「ジャイアントも崖がある限り攻めてこれんしな。」

「それなら余裕じゃな。」

 まわりから安堵の声が上がった。


 悲観的な俺的には、そんな上手くいかない気がする。

 緊張で胃が痛い。


「メルローよ、あとどのくらいかかる?」

 ディグドがメルローに訊ねた。

「4日くらい。」

「みなさんも可能な限り、テキコロース制作にご協力お願いいたします。」

 と、俺が頭を下げた瞬間だった。


 ドーン。

 ドーン。


 と、何かが落下したような音が外から聞こえてきた。

 遠くのように聞こえるが、洞窟内なのでよくわからない。


 俺たちは恐る恐る街の入り口から外を覗く。


 ドーン。


 音の正体はすぐわかった。

 ジャイアントがどこからか運んできた大きな岩を崖下に投げ落としているのだ。


「あいつら崖を埋める気じゃな。」ドワーフの一人が言った。

 

 殺意たけえな。


「こりゃ、急がないとダメかもしれんぞ?」


 確かに崖があるからいつまでも大丈夫って感じじゃ無くなってしまった。

 ヤバいかもしれん。


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