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カリストレム攻防4

「「スージー!?」」

 

 思わぬ人物の登場に俺とリコは同時に声を上げた。

 馬車から顔を出したのは前職場のボス、スージーだった。


「おお、ケーゴ!リコも、無事でよかった。頑張ってるようだな。」

「ボスこそ! 何だってこんなところまで!?」

「魔石の在庫をギリギリまで持ってきてやったんだよ! 戦力はリックとレックしか連れてこれなかった。」

 レックも来てるのか!

「マジですか! ありがとうございます!!」

 スージー宛にもダメ元で協力要請の手紙を出していたが、まさかこんな形で応じてもらえるとは。

「立ち往生してたところに、ちょうどカッセルの連中に拾ってもらってここまで来たってわけよ。」

「ランブルスタは良いんですか!?」

「さあ? ガスもロカも居るし大丈夫じゃね?」


 適当な。

 って、ロカ、衛士になったんだ。

 ・・・大丈夫かなあ。ガスしかいないようなもんじゃん。


「そもそもこんなすげえことになってると思わなかったしな。ってわけで、この魔石は誰に売ったら高い?」

「市長です。」即答する。「でも、この状況なんで手心はお願いしますね。」

「どこだ? 案内を頼む。」

 スージーは俺の頼みは無視して、俺とリコのどっちが金づるに案内してくれるんだとばかりに尋ねてきた。

「ケーゴ、任せたわ! 私は戻る!」

 悔しいけど、リコが前戦に残ったほうが良いのは間違いない。リコのほうが敵をやっつけられる。

「わかった! また後で!!」


 俺はリコに背中を向けてスージーを案内する。

 南にちょっとだけ行った所に本部がある。そこに市長は居るはずだ。

 俺の案内に従って、スージーが馬車の一台を誘導していく。


「ボス、よくこんなところまで来る気になりましね。」

「一番高く買ってもらえる所に売りつけるのは商人の基本だ。確実に儲かるってのに来ない理由はねぇよ。」

 そっか。スージーは金のリスクは取れないけど、金のためなら命のリスクは平気で取れる人だったか。


「市長!」


 道の先にガラス市長を見つけて呼びかける。

 市長はこっちを振り向いて寄ってきてくれた。


「ケーゴ君、どうした?」

 市長が俺とスージーを交互に見る。

 スージーも市長がわざわざ俺に対応したので目を白黒させている。

「彼女はランブルスタの魔石商店のスージーです。魔石を売りたいそうです。」

「ほんとうか!! それは助かる!」

「市長様。あたしゃ、命がけでここまで抜けてきたんですよ? 足元はしっかり見させてもらいますからね! よろしくお願いしますよ。」


 出会い頭のボッタクリ宣言の後、スージーは市長と魔石の売買について話し始めた。

 良くは聞こえていないが、市長がタジタジな様子なので、結果的に相当ぼられると見た。

 結果は気なるが、ここでのんびり二人のやり取りを聞いているわけにも行かない。


「俺は戻ります。」


「待て!」

 市長は俺を止めるとスージーとなにやら質問を始めた。

 しばしの受け答えの後、市長は俺に言った。


「聖魔光機を使用したせいで魔石が足りない。彼女の魔石を買っても明日の朝前には切れる。北門の魔術師たちに1時間分の【ライト】用の魔力を残すように伝達してくれ。」




 北門まで戻ってきた俺は市長の伝言を後方支援部隊に伝えると、防壁に駆け上がりそのまま街の防衛に戻った。

 再びモンスターの大群と向き合うことになった俺だが、日中に関して言えば二日目の防衛はかなり楽なものだった。


 カッセルからの援軍がデカい。

 北門の人員に余裕が出た。少しの時間だが休憩が取れるようになったのだ。


 中でも援軍を先頭で率いてきた金髪剣士とその仲間の冒険者たちがめっちゃ強い。

 たぶん王都の冒険者クラスの実力だ。4、50レベルあるんじゃね?

 平気で防壁から跳び下りていって街の外で戦ってたりする。


 彼らが元気なうちは、今来ているようなモンスターが何匹居ようと彼らを倒すことはできないだろう。

 何だったら、魔力温存して杖で殴ってる魔術師が活躍してるレベル。


 ぐぬぬ。

 俺もアルファンの時はあんくらいはやってたし!


 でも、彼らや他の援軍のおかげで、俺たちは順繰りで休むことができた。

 実際寝れたのは一時間くらいだったかもしれないが、それでも全く寝ずに二徹目に望むのとでは体力と気持ちが全然違う。

 俺もレベルが上ってきて、相手を倒すこともできるようになってきた。

 これなら、なんとか2晩目も乗り切れるんじゃね?と思った。


 だが、夜半。

 ついに魔石が切れた。


 カリストレムは闇に包まれた。


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