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決闘

「貴殿に決闘を申し込む!」

 エルマルシェが籠手を投げつけて叫んだ。


「望むところです!」リコも受けてたった。


 ちょ、待って、リコじゃ勝てない!


「ちょっと二人とも、落ち着いて! 決闘なんて絶対ダメ。」

 広いところに出ていこうとする二人を慌てて止めようとする。

 

「いいじゃん。殺し合うわけじゃないんでしょ? リコリコ、頑張ってね〜。」

 唐突にヤミンがしゃしゃり出てきて、俺の腕に取り付いて体重をかけた。

「ちょ、止めないと!」


「ヤミンっ!」

 ちゃかされたと思ったのか、リコはほっぺたを膨らませてヤミンを見た。

 ヤミンは小さく舌を出して露骨に目をそらした。


「貴様っ! 貴様こそケーゴの邪魔であろう!」

 エリーが何故だか今度はヤミンに怒りはじめた。

「邪魔じゃないよね〜。」俺に向かってニッコリと笑いかけてエリーを煽りにかかるヤミン。「な?」

「あ、はい。」

 最後に威圧しないで下さい。

「てか、エルマルシェさんは何でそんなにケーゴとの会議にこだわるのかな? もしかして二人っきりでなにか期待してることでもあるのかにゃ?」ヤミンがいたずらっ子のようにエルマルシェをからかう。

「き、期待!? ちが! わ、私はただ・・・」

 ヤミンに煽られて、どんどんと顔が赤くなっていくエリー。

「あれ〜。どうしたのかなぁ。もしかして、ず・ぼ・し? エルマルシェもすみに置けないねぇ。」ヤミンがすっとぼけたことを言ってエリーをからかい続ける。「わざわざ二人きりになって何をするつもりだったのかな〜?」

「ちがっ、そうじゃない! 違う!」


 ますます顔を真っ赤にするエリー。

 俺からは顔をそむけているが、耳までゆでダコの様に真っ赤だ。


「ヤミン、からかっちゃダメだって! エリーめっちゃ怒ってるよ! 顔真っ赤だよ。」


「怒ってる・・・?」

「嘘でしょ?」

 ヤミンとリコが俺をとんでもないものを見るかのように見た。

 周りで見ていた騎士団員たちも何故かざわめき立つ。


 なんか今、ものすごい空気が流れてない!?

 

「・・・・。」

 俺から顔をそむけたままのエリーの耳の色がどんどんと戻っていく。

 ヤミンがそっと俺の腕から離れて離れたところに座り直した。

「・・・どうしましょう。エリーさん・・・。やります?」リコがエリーに尋ねた。


 なんかすべてが終わった雰囲気が流れてるんだけど。なんで?


「騎士が手袋を投げてしまった以上、やらないわけにはいかない。もちろん第二特務大隊の副団長として負けるわけにもいかないし。」

「そうですか。しかたありません、やりましょうか。」

「すまんな。」


 えーと?

 あれ?

 仲直りしたの?


 え、止めたほうがいいの?


「ヤミン、どういうこと? いったいこれはどうなったの?」

「リコリコ頑張れー。」ヤミンは俺をガン無視してリコを応援し始めた。


 なんかよく解んないけど、互いに揉めてる雰囲気がなくなったのでとりあえず安心か?

 その代わりになんか俺に対するみんなの空気が冷たくなった気がする。


 エリーとリコは炊事場近くの開けた場所に行くと向かった。


「寸止め、魔法ありでいいですよね?」

「ああ、構わない。互いに怪我をしないようにしよう。」


 二人は剣を抜いて向き合った。


 二人の周りを騎士団のみんなが取り囲み、エリーに声援を浴びせ始めた。

「リコ、負けるなよ〜。」ヤミンが騎士団に対抗して大声でリコを応援し始める。


 やっぱ、俺はリコの応援をすべきだよな。


「リコ、がんば・・・

 と声を上げようとした瞬間だった。


「た、大変です!!」


 この時間の見張り担当だったマーガレットが叫びながら駆け込んできた。


「武装した集団がこっちに向かってきています!」


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