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レベリング

 翌日の朝。


「ケーゴ様! 次はどうしたらよろしいでしょう。」


 3日も立たずに『様』がついた。


「何なりと下命くださいませ。」

「ケーゴ様がどんな作戦を考えられるのか楽しみですわ。」


 昨日、みんなにアドバイスをし終わった後、訓練をする体力を残さず、ギリギリまで周辺のモンスターを狩り続けるように命じた。

 それを彼女たちは真面目にこなしてくれたらしく、みんな何かしらのレベルが上がった。

 特にカサンの代わりにヤミンが入ったチームが、ヤミンにそそのかされてモンスターと戦いまくったので、全員複数のスキルのレベルが上がっていた。

 どうやら、ヤミンはこっそり探索範囲を広げて強めのモンスターとも戦っていたらしい。


 今まで実戦なしで訓練ばっかりしてこつこつレベル上げしていた騎士たちは、俺のアドバイスの後たった一日でなんかのスキルが伸びたし、実戦での手応えにも思う所があったのだろう。完全に掌返しだ。

 

 思ったよりみんなのスキルの伸びが早かったので、このままだとカサンが置いてかれかねないと、次の日からはカサンもガードのできるリコにくっつけて無理やり前線に放り込んだ。その結果、彼女は【命中】【回避】【打撃】【防御】【受け】を全部1レベルに上げてきた。


 なんか数日にして立場が一気に向上した。

 前にもあったなこんなの。

 

「ケーゴ様。できれば個人的にアドバイスをしてほしいんですが・・・。」ミリアがつつと俺に寄ってきて恥ずかしそうにお願いをしてきた。

 個人的にレッスンを頼んでくるようにすらなっている。

「え、うん、じゃあステータスを見せて。」

「そういうのではなく、その剣の振り方とか体の使い方とかがまだアヤフヤですの。ケーゴ様に手取り足取り教えて貰えればきっともっと上達が速い気がしますのよ?」

 ミリアはもじもじしながら俺のことを上目遣いに見上げた。

「そうだねぇ・・・」

 俺、鞭しか使えないから剣関係教えられないんだよね。

「剣関係はリコのほうが得意だから、リコに一度動きを見てもらうと良い。いいかな? リコ?」

「いいわよ。」リコは何故かごきげんに頷いた。


 なんでだろ?

 さっきまですげー機嫌悪かったのに。




 次の日の朝。

 みんなの信頼も得られはじめたので、少しやり方を変えることにする。

 本格的なパワーレベリングの開始だ。


「今日から探索範囲を広げていこうと思います。皆さん今日は全員俺たちと一緒に広域を探索しましょう。」

 

「「「はいっ」」」

 エルマルシェを除いたみんなが大声で返事をする。


「レッドドラゴニブルや泥魔獣も出ます。みんなにも戦闘には参加してもらいますからね。」

「ちょっと待て!」エルマルシェが慌てて口を挟んできた。「レッドドラコニブルは30レベルのモンスターだ。泥魔獣は25レベルなうえ数体まとまって出る。危険すぎだ。常識をわきまえろ!」

「今回はオレたちのフォロー付きです。一回戦ってもらって戦い方が理解すれば大丈夫です。」

「何が、フォロー付きだ! お前たちの力があったところで、みんなを守りきれるか!」


「ケーゴ様なら大丈夫です。」

「エリー様はケーゴ様を信じて動いてみましょう。」

「いい加減、ケーゴ様を信頼してくださいまし。」


 みんなが俺の取り巻きみたいになっとる。


「な、貴様ら、私はお前たちのためを思って・・・」

「ちゃんと俺の言うことを聞いていれば大丈夫です。この島は戦い方しだいで完封できる相手が多いんですよ。」エルマルシェに説明する。ってかルナも説明してたんだけどな。


「そうですわ、エリー様もケーゴ様の言うことを聞いていれば間違いありません。」

「ケーゴ様の言うことに従うのが一番ですわ。」

「エリー様、ケーゴ様は本当にすごいんですのよ?」


「ぐ・・・。お前たち・・・。いつのまに・・・。」

 数日前からうって変わってしまった部下の態度にエルマルシェが絶句した。


 そんなこんなで、今日は全員をつれて上陸した場所から少し離れた狩り場にやってきた。

 この周辺のモンスター最強はレッドドラゴニブルだ。

 そして狩り場に向かう途中で、早くもそのレッドドラコニブルと遭遇することに成功した。


 ドラゴニブルはドラゴンの亜種だ。

 首の長いドラゴンで羽はついているが飛べない。

 恐竜の首長竜にコウモリの羽がついていると思ってくれるといい。

 首の高さを入れると15メートル以上ある。

 倒せると分かっていても、初めて見るとデカさにちょっとびびる。


「おい! 近づくな。私とカサン以外は下がっていろ。お前たちもだ。」エルマルシェが泡を食って俺たちに指示を出し始めた。

「エルマルシェさん、落ち着いて。これからあれと戦うんですって。まずはマーガレットと俺がアタッカー、ガードとしてゼルマノールとリコ、フレイアがサポートで防御魔法を、ヤミン・・・いや、ここはサリアで。」

「おい! むちゃをさせるな!」

「大丈夫ですって。」


 俺の自信満々な様子にマーガレットとゼルマノールとフレイアが怯えながら前に進み出てきた。


「マーガレット! さすがに危険だ!」エルマルシェは困ったようにマーガレットにつめよる。

「大丈夫ですよ。」とにっこり笑うマーガレット。「ケーゴさんは全部解ってやってます。」

 エルマルシェは何かを言おうと口をパクパクとさせていたが、マーガレットがやる気でストレッチを始めたのでものすごい形相で俺を睨みつけた。

 俺はエルマルシェのことは無視して說明を続ける。

「レッドドラゴニブルは基本攻撃のダメージは強いですが【命中】は高くありません。まずは【回避】できる人が前です。後列の弓矢隊は攻撃に集中させないためにも援護射撃を。ゼルマノールは指示があるまで後方で待機。マーガレットは無理せず【回避】に意識を割いて。いきますよ!」


 そう言って俺は攻撃率の高いドラゴニブルのどまん前に走る。

 リコがその脇を硬め、マーガレットが続く。


 首長竜の攻撃は踏みつけと頭突きだ。

 どれもモーションが大きい。

 マーガレットも【回避】に専念していれば避けそこねることはあまりないはずだ。

 それに【防御】が8レベルになったマーガレットなら一発で落ちることもないし、いざという時のために【ガード】の高い二人を選んである。

 俺も【回避】に専念。


「ゼノマノール前へ! 回避無効の範囲攻撃が来ます! マーガレットをガード!」


 レッドドラコニブルが首を振り回す。

 ゼルマノールとリコがマーガレットと俺を【ガード】。


 そして、首を振り回して頭がクラクラしたのか、レッドドラコニブルが完全に無防備になった。

 このタイミングで攻撃するのが基本。


 今の一連の動きさえできればレベルの低い人間でも倒せるのがレッドドラコニブルの良いところ。

 この辺りに出るもう一方の強敵、泥魔獣にも同じように堅めの攻略法がある。

 コルドーバがレベル上げのメッカになった一つの理由だ。


「みんな、今がチャンスです!」そう言って俺自らも鞭をかまえる。「相手が立て直す前に攻撃を! アタックできる人はいっせいに攻げ、あっ!?」


 【クリティカル】しちまった!!


 俺の鞭がレッドドラゴニブルの首のつけねを確かな手応えで貫いた。

 レッドドラコニブルは長い首を一回振り回した後、ドシリと倒れこんだ。


「一発で倒しちゃったらダメじゃない!」

「練習にならないよ。」

 ヤミンとリコに怒られる。


「ご、ごめん。ついうっかり。」


「う、うそでしょ・・。」

「レッドドラコニブルを一撃!?」

 みんなが愕然としている。


 エルマルシェはいざという時に加勢するつもりだったのだろうか、抜いていた剣をかまえたまま呆然としている。


「ええと、ごめんなさい、次は俺は攻撃しないようにしますから。皆さんで安全に狩りましょう。」


 こんな感じで、午前中は俺たちも積極的に戦闘に加わってみんなにレッドドラコニブルと泥魔獣の狩り方を叩き込んで 午後からは各班に完全に可能な限り任せた。

 とりあえず、島の奥の岩場まで行かなければば注意すべき魔物はこの二体だけだし、どちらも足が遅いのでいざとなったら逃げられる。


 念のため午後はできる限り見回りするようにしていたが、彼女たちのレベル上げは大きな問題も起こらず順調に進んだ。

 

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